劇場公開日 2018年2月9日

  • 予告編を見る

「ウーよオリジナルの河を渉れず」マンハント 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

2.5ウーよオリジナルの河を渉れず

2018年8月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

単純

興奮

高倉健1979年の主演作『君よ憤怒の河を渉れ』を中国でリメイク。
オリジナルは中国での高倉健人気を決定付けたほどメガヒットしたが、正直、数ある高倉健主演作の中でも特別名作って訳でも…。
確かにスケールの大きい逃走アクションではあるが、ツッコミ所があり過ぎて…。
何より、映画史上に残る“迷”曲!
ある意味、カルト作。
それがどうリメイクされたか。

監督は、ジョン・ウー。
ウーも高倉健に憧れた一人。
ウーなら生温かったオリジナルをハードなアクション映画に再生してくれる…!
そう期待していた。

スローモーション、二丁拳銃、鳩…。
リメイク映画であってもウーと言えばのアクション演出は健在。
肉弾戦、車内アクション、水上バイク・アクション、手錠で繋がれてのガン・アクション、さらには日本刀バトル…。
多少リアリティーには欠けてもアクションは見応えあり。
ウー流ケレン味もたっぷり。
アクションは悪くなかった。
が、ウーの手腕を以てしても、話や設定の不味さまでは改善出来なかった。
何もそこまでリメイクしなくてもいいのに…。

開幕早々、ド演歌とカタコト日本語の中国人…。
邦画往年のアウトロー・アクションのムード、高倉健の『駅/STATION』も彷彿させ、オリジナルのメインタイトル曲がアレンジしてかかったりとリスペクトやオマージュは感じさせるも、このOPシーン、必要だったのかな…?
突然、無実の罪を着せられた主人公。追う刑事。追いつ、追われつ。
やがて事件の背後に浮かび上がる製薬会社の陰謀…。
大まかな展開や設定はオリジナルを踏襲。
が、脚色や新要素が微妙だった。
最たるは、OPにも登場した二人組の女殺し屋。
また、オリジナルでは主人公に助けられ、恋に落ちるだけだった令嬢ヒロインが、銃を持って勇ましく戦い、製薬会社と関わっていた亡婚約者が居て…。
オリジナルは割りとシンプルだったのに、必要なのか不必要なのか味付けして、何だかごちゃごちゃ支離滅裂に…。
作風はシリアス。でも大真面目にやればやるほど、クールなのが逆にダサく、滑稽に見えてくるから困ったもんだ。
失笑、ツッコミ所、難点の多さは言うまでもなく。

主演チャン・ハンユーは男臭い魅力を放っているが、高倉健より渡辺謙に似てて…。
オリジナルで原田芳雄が演じた刑事役に福山雅治は荷が重かった。あのニヒルで曲者な存在感には遠く及ばず。
桜庭ななみは相変わらず可愛いが、刑事と言うより女子大生ちゃん。
國村準も登場した時から分かる如何にもな悪役で、せっかく集まったアジア・キャストも充分本領発揮してるとは言い難く…。
ファンにとっては倉田保昭の出演は嬉しい所。

オール日本ロケ。
先にも述べたが、ウーの日本へのリスペクトやオマージュは込められていいが、これがあの『男たちの挽歌』『フェイス/オフ』『レッドクリフ』を撮った名匠の作品かと思うと…。
『レッドクリフ』以降精彩に欠けるウーに、また一つ凡作が出来てしまっただけ。

高倉健存命中、是非とも一緒に映画を作りたかったと言うウー。
ある意味念願叶って高倉健と関われたかもしれないが、でもこんな形より、二人ががっつり組んだ作品を見てみたかった…。

近大