「駒井 漣を見よ!これからが楽しみな女優」名前 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
駒井 漣を見よ!これからが楽しみな女優
公開館がひじょうに少ないが、ちょっとした逸品である。駒井 漣(こまい れん)を見よ! 2000年生まれの17歳女優の演技に引き込まれる。可愛いのはもちろんだが、それ以上の深みがある。おそらく舞台演出もする戸田彬弘監督の意図する演技なのかもしれない。
ストーリー原案は、直木賞も受賞しているミステリー作家の道尾秀介。
主人公の中村正男は経営していた会社が倒産し、様々な偽名を使って、隠れた暮らしをしている。ある日、そんな正男の前に、"お父さん"と呼ぶ女子高生・葉山笑子(駒井漣)が現れる。
"実名"からも、"人生"からも逃げていた正男だったが、笑子のペースに巻き込まれながら、親子のような時間を過ごすようになるが、やがて2人の秘密が明らかになっていく。
主人公の中村正男を演じるのは、津田寛治。先日他界した大杉漣も出演した、北野武監督の「ソナチネ」(1995)をきっかけに、これまで150本以上の映画に出演している名バイプレーヤーのひとりだ。代表作は、テレ朝のドラマ「警視庁捜査一課9係」シリーズの村瀬健吾役かもしれない。
オジサン役・津田寛治と、女子高生役・駒井漣の作り出す空気感。2人の人生経験の差が生み出すバックグラウンドの違いや深みが、おかしなドラマを生み出していく。
女子高生・葉山笑子(駒井漣)は、水商売で生計を立てる母親と2人暮らしの母子家庭。"父親は死んだ"と母親から言われている。学校では演劇部の幽霊部員だったが、ひょんなことから演じることになった役柄を通して、"素の自分自身"を見つめなおす瞬間を描いている。この劇中劇の稽古シーンも見どころである。
テーマ曲となっている「トルコ行進曲」が印象的に使われる。笑子の鼻歌だったり、編曲に変化をつけて各シーンにたびたび使われている。
なんら生活は変わっていないにも関わらず、最終的には、不思議と前向きな気持ちにさせられる2人の関係性に共感する。
(2018/7/11 /シネマカリテ/シネスコ)