俺たちポップスター : 映画評論・批評
2017年7月25日更新
2017年8月5日より新宿シネマカリテほかにてロードショー
コメディ界と音楽業界がガップリ手を組んだ、クダラな楽しいお祭りムービー!
ショービズ界のトップスターとして人気絶頂の“コナー・4・リアル”に取材班が密着し、知られざる素顔に迫るドキュメンタリー映画を製作! そんな体で進行するモキュメンタリー(疑似ドキュメンタリー)だ。
音楽ドキュメンタリーを模したコメディ映画の歴史は古く、架空のロックバンドのツアーに密着した「スパイナル・タップ」(1984)はフィクションなのにロックンロールライフの真髄を映した傑作として語り継がれている。本作は、音楽ネタで大ブレイクしたコメディチーム“ザ・ロンリー・アイランド”が全力勝負で挑む「スパイラル・タップ」の最新進化形だと思っていただきたい。
優れたコメディ映画のレビューで困るのは、「爆笑の連続!」の一言でこと足りてしまうこと。主人公コナーが赤ん坊の時にドラムを習得していたり、取り巻きたちとバスケットボールに興じるシーンはあからさまに「ジャスティン・ビーバー ネヴァー・セイ・ネヴァー」のパロディだが、別に元ネタを知っていなくてもまったく問題がない。全編にわたって歌詞は超クダラないのにやたらとハイクオリティなオリジナル楽曲が投入され、成功して有頂天になったセレブが陥る“大失敗あるある”をこれでもかと畳みかけていく。
筋金入りのサイテー男であるコナーを演じているのはリアリズムラブコメ「セレステ∞ジェシー」のアンディ・サムバーグで、等身大の青年だった“ジェシー”としてサムバーグを知った人は、巨大ステージで(ほぼ下ネタの)歌とラップで暴れ回る姿に目を丸くするに違いない。
前述のザ・ロンリー・アイランドはサムバーグとアキヴァ・シェイファー、ヨーマ・タコンヌの三人からなるユニットで、シェイファーとタコンヌが共同監督を務めながらコナーの幼馴染役で出演。彼らがいかに業界で愛されているかを証明するゲストの豪華さに驚かされる。過去に何度もコラボしているジャスティン・ティンバーレイクやマイケル・ボルトンはもちろん、マライア・キャリー、ファレル・ウィリアムス、マルーン5のアダム・レヴィーンから元ビートルズのリンゴ・スターらが本人役で登場。「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーンも歌姫役で顔を出すが、メイクがケバ過ぎて気づかない人もいるだろう。
本作はアメリカのコメディ界と音楽業界がガップリと手を組むことで実現した壮大なお祭りムービーであり、徹頭徹尾バカバカしいギャグの洪水であり、それでいてコナーと仲間たちをついつい応援してしまう優れた青春映画でもある。端的にまとめると、やたらと楽しい快作なので見過ごす手はないですよ!
(村山章)