「すばらしかった」エリザのために もち粉さんの映画レビュー(感想・評価)
すばらしかった
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なぜ主人公が医者なのか。なぜ彼の友人が警官なのか。そういった「セリフで語られない面」に目を向けると、彼らの苦悩と戦いの歴史が垣間見え、やるせなくなる。そういった「語られない面」の置き方が、この脚本は実にすばらしかったと思う。彼が林の中、ひとり泣いてしまったその時に、わたしはふかく彼に心を捕らえられてしまった。あのとき、彼はどんなに悔しかったことだろう。
「ダメなことはダメなんだ」「どうして?」「お母さんが教えてくれる」ここで自分が思う正しさを少年に語らないところに、主人公のどうしようもなく実直な面が現れていると思う。やったことの是非はともかくとして、彼の根本は優しく、賢く、そして真摯なのである。
最後「わたし、上手くやったでしょ」と娘が笑ったそのときに、ああ、主人公が彼女に教えてきたことは、きちんと彼女の中に根付いているんだなあと、しみじみ感慨深くなった。彼女は自分で正しさを選び、そのうえ「上手くやること」すらも、自分で物にしたのである。そしてそれはまさに、主人公が戦い、負け、屈辱にまみれた痛みと共に、彼女に伝えてきたことなのだ。
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