「勘違いサイクロン」アルティメット・サイクロン 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
勘違いサイクロン
幾ら日本劇場未公開だからと言って、的外れな邦題を付けたメーカーが悪い。
見た人ほとんどが言ってるように、これは大嵐のディザスター・パニックではなく、高所で電線を取り扱う架線作業員=ラインマンとその家族を描いたヒューマンドラマベース。
ラインマンを題材にしたのはいい。アメリカでは死亡率も高い非常に危険な仕事だという。
『オンリー・ザ・ブレイブ』だって山火事パニックかと思いきや、森林消防隊員たちのヒューマンドラマであった。
が、あちらは挫折、成長、絆、任務などベタながらも熱く描き、非常に見応えあったのだが、こちらは…。
危険性や仕事ぶりを描いているように見えて、それは上っ面だけで引き込まれるものなく、お決まりの仕事中の不手際、ラストも誰かしら犠牲になるのは察しが付き(その“誰か”もすぐ分かる)、トラヴォルタ演じるベテランラインマンとその姪と彼女と恋に落ちる若いラインマンのチープな色恋模様や関係性、姪の周りをうろつくストーカーなどつまらん三流ドラマが続く。にしてもこのストーカー話、一体何なんだ…?
終盤になってやっとパニック展開になるも、時すでに遅し。迫力もスリルも無く、“アルティメット・サイクロン”にこのつまらなさを吹き飛ばす勢いは無かった。
監督は『ソウ』シリーズを手掛けており、これで俺もグロサスペンスから熱い人間ドラマの監督になれる!…と勘違いしたのだろう。根本的な力量不足。
トラヴォルタも熱血×感動×スリル×パニックの“傑作”でこれで俺も第一線にカムバック出来る!…と勘違いしたのだろう。似たような題材の『炎のメモリアル』は悪くなかったんだけど…。
B級続くトラヴォルタ。ニコラス・ケイジやブルース・ウィリスもB級落ちで嘆かれているが(最もニコケイは復活の兆しを見せ、ウィリスは引退と認知症で改めてキャリアをリスペクトされているが)、全く精彩ナシのトラヴォルタこそ深刻だ。
そういや実話が基だった。実話が泣く…。