「「ロックの偉人」の生涯を辿れる秀作です。」ジャニス リトル・ガール・ブルー sanjoo_kusuriyachooさんの映画レビュー(感想・評価)
「ロックの偉人」の生涯を辿れる秀作です。
ひと言で表すと、非常に堅実な作りのドキュメンタリー・フィルム。 ジャニスをこれまで全く知らなかったヒトでも、彼女の業績とその生涯を正確にたどることが出来ます。
故郷への強い想いをずっと持ち続けたにも拘わらず その故郷からは遂に歓迎されることの無かったジャニス...
両親、特に母親への強い愛慕心を失わなかったにも拘わらず その母親から はっきりと賞賛され 慰められることが遂に無かったジャニス...
常に自らの傍らに居て心許せるヒトをずっと探し求めていたにも拘わらず 遂に得られなかったジャニス...
言い知れぬ孤独と虚無から逃れようと 溺れていったドラッグ... 途中 何度か脱出したものの、深まる疎外感に耐え切れず また麻薬に手を伸ばす... 結局 薬と酒の両者から縁が切れず、ドラッグとアルコール中毒で心身のバランスをズルズルと崩していったジャニス...
故郷に、母親に、身近なヒトに、これまで謗られ 避けられ 後ろ指を指されてきたと強く感じていた彼女は、流浪呻吟の末にやっと見い出した自分の才能に全てを賭け、何とか自分を認めて貰おうと 全身全霊で取り組んでいったのです。 それが彼女の「一試合完全燃焼」とも思える熱唱スタイルを創り上げました。「次の一曲」など全く念頭に無いかのような、火を吐くような あの熱唱... やがて ヒトは「ブルースの神様が乗り移った..」と称するようになりました。 そう、確かに ブルースの.. と言うよりも 音楽の神様が彼女に取り憑いたんです。 私もそう信じます。 しかし.... 彼女は「神様」を自らの胎内に取り込んだ代償を、大きな大きな代償を、支払うこととなったのです...。
この作品を観終わって、ベット・ミドラー主演の "THE ROSE" をまた観たくなってきました。 ジャニスの生涯をベースにした創作ですし、ジャニスの曲は全く唄わないんですが、映画を思い返すにつれ、ジャニスの影を絶えず引き寄せながらベットは演じていたのでは..と感じられるんです。 音楽の神様に取り憑かれ、最後はその神様によって葬られる...そんな印象すら抱かせるエンディングだったと思います。 今回のドキュメンタリーを下敷きに置きつつ あの作品を観直すことで、以前とは違った何かが見えるような気がするのです。 何か楽しみです...(^_-)(^_-)