劇場公開日 2017年6月17日

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TAP THE LAST SHOW : インタビュー

2017年6月14日更新
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40年の思いが結実! 水谷豊監督×岸部一徳が照射するタップの世界

俳優・水谷豊が、40年前から構想していたタップダンスをテーマにした企画を、自身の初メガホン、主演により映画化。大ヒットドラマ「相棒」でもおなじみの盟友・岸部一徳らとともに、ショウビジネス界の光と影を、ビタースイートな物語と圧巻の映像表現で描く大人のエンタテインメント作品を作り上げた。いぶし銀の魅力が溢れる名優ふたりが、今作で監督と俳優という初めての関係で対峙し、表現者として語り合った。(取材・文/編集部、撮影/間庭裕基)

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とある理由から大きな怪我を負い、一線を退いたタップダンサー・渡新二郎。天才と呼ばれた栄光の時代から数十年を経て、最近は酒におぼれる毎日を送っていた。そんな渡が、旧知の劇場支配人・毛利から、最後のショウを演出してほしいという相談を持ちかけられる。渋々依頼を引き受けた渡のもとに、さまざまな背景を持つ若きダンサーが集い、渡の止まった時間が再び動き出す。

「『相棒』をずっと一緒にやっていて、官房長があのような結末を迎えたので、これからは他の作品でご一緒できますねと話していたんです。お互いチャンスがあったら、映画をやりたいという思いがずっとあったので、脚本を作る前から一徳さんのスケジュールの確認をしていました」と言う水谷監督。関西弁を話し、ひょうひょうとした佇まいの毛利役は「最初から一徳さんのイメージで作っていきました」ときっぱり。

一方の岸部は「僕は本当のことを言うと、水谷さんの初監督作品なので、僕でいいのかな? っていうのが正直なところあって。ほかにベストの人がいるはずではと、考えました。それでも僕と一緒に……というのがとてもうれしかった。だから、普段の映画に出るということと違う何かが自分の中に芽生えて、がんばらなくてはいけないと思いましたね」と本心を明かす。

華やかな世界で生きる表現者たちの挫折と成功、トップに登りつめた者から若者たちへの技術の継承というテーマを硬軟併せ持った表現で描き、ハードボイルドな世界観を作り上げた。随所で映画ならではの映像へのこだわりも感じられる。「初めての経験でしたが、こうでなければならないというものではないので、まずは自分の思うようにやりました。僕がイメージするカットはありますが実際その画を作るのは撮影監督です。『相棒』から『少年H』などずっと一緒にやっているカメラマンの会田正裕さんですが、すべて僕の想像していた画を上回っているんです。だから、これが面白くならないわけがないと思いましたね。驚きの連続でした」と水谷監督は謙虚に語る。

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数多くの日本の名匠から愛される岸部は、監督・水谷豊について「今回、水谷さんは60歳を過ぎてから監督をやられています。僕もそうですが、俳優の経験が長い期間あると知らないうちにいろんな監督と出会っているんです。ですから、俳優が監督をやると、何か他人から刷り込まれた平均的で無難な、まとまりみたいなものが少し出てくると思うんです。でも、水谷さんからは、そのまとまりではないものが出てきて完成した。途中経過も含めて、全く新しいスタイルの映画監督が生まれたなという印象です」と笑顔を見せる。

水谷監督にこれほどまでにタップにひかれた理由を尋ねると、「明確な理由は実はないんです」。「でも、これだけ長い間タップを思い続けたというほど、自分にとってタップには魅力があるのだと。人をそこまでさせるものを持っているんです。普通、タップというと足の動きを想像されると思うのですが、この映画のように、あらゆる曲に対応できる動きがあり、別世界に連れて行かれてしまうようなショーにもなる。この作品でタップのイメージを変えられたら」と熱を込める。

「実際参加して、本当におもしろかった」と撮影を振り返る岸部。「撮影前に一応動きを想像してセットに入ることがあるんだけれど、意外とその通りにならなかったのが楽しかった。多分、映画の成功とは何かということになるけど、それは立場によって変わる。大ヒットすることが成功と考える人もいれば、映画監督はやりたかったことをやっていい作品を作れば成功になる。初めての作品で、そういう大事なことを水谷さんはやり遂げたと思う。これからは監督業がいいんじゃないかと思った。これから先、何本も撮ってくださったら」とべた褒めだ。

「撮影終わって、一徳さんに『監督の方が向いてるんじゃない?』って言われて、『そんなに俳優ダメですか?』って返しました(笑)」と照れ隠しに冗談を飛ばした水谷監督。「相棒」とはまた違った、黄金コンビによるエンタテインメントの新たな傑作がここに誕生した。

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