「筋書きのないドラマが胸を打つ。音楽ドキュメンタリーの佳作」ソング・オブ・ラホール AuVisさんの映画レビュー(感想・評価)
筋書きのないドラマが胸を打つ。音楽ドキュメンタリーの佳作
パキスタンのかつての芸術の都ラホールで、伝統音楽の再興を目指すミュージシャンたち。まず彼らがみな個性豊かで、いい顔をしている。
シタールやタブラを使って「テイク・ファイブ」を演奏した動画をYouTubeに投稿したところ、注目を集め、大手メディアが取り上げ、ついにはウィントン・マルサリスからニューヨークへ招待される。まさにとんとん拍子、絵に描いたようなサクセスストーリーだ。
だが、本作は現実の厳しさも冷徹に映し出す。NYに着いてからのリハで、ある奏者が求められるレベルで演奏できない。マルサリスの心配顔に、観ている側もハラハラしてくる。結局このミュージシャンはクビになり、地元のインド系演奏者が呼ばれるのだ。なんという残酷なドラマ!
音楽的には、マルサリスの演奏や編曲のクセのなさが、結果的にパキスタン伝統音楽とジャズの融合に奏功した。ジャズという音楽の懐の深さを端的に示した好作だ。
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