「罪と購い」淵に立つ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
罪と購い
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2016年最後の鑑賞作品を飾るには余りにも深い内容であった。まるで明治時代の私小説のような文学性が高いストーリーである。
夫の結婚前の殺人共犯の罪。男を愛してしまう妻。しかし、すんでのところで交わりを断られた男は、あろうことかその夫婦の年端もいかない小さい娘に暴行を加え、死ぬ手前の身体的麻痺に追い込んでしまう。そう、総てはすんでの『淵』の所で家族はしがみつく人生を男に背負わされてしまうのだ。後半出てくる男の息子も又、そのすんでの家族と共に父親の罪の意識に苛まれる。こうしてまた男のせいで『淵』に立たされる人間を産んでしまう。生と死の淵を弄ぶかの様に男の亡霊が家族を追い詰め、淵から踏み外す妻。娘を道連れに心中を図ろうと淵から堕ちた母娘は、しかし一歩で又助かってしまう。しかし娘はその死からこちらに戻るのかそれとも堕ちていってしまうのか、父親の必死の救助と共にエンディングを迎え、その顛末を見据えることは観客はできず、淵を漂い続ける。そんな重厚な作品だ。
浅野忠信の切れている演技もさることながら、やはり古館寛治の煮え切らない演技は大変秀逸であり、注目していた役者としてとても満足する演出である。
哲学的なメッセージも含めた本作品の深遠な闇が、まるでコールタールの様に纏わり付き、引き摺られるようなそんな気持ちを深いため息と共に映画館を後にした内容であった。
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