「哀しき顛末に誰がした…?」名もなき復讐 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
哀しき顛末に誰がした…?
これまで見てきた韓国サスペンスの中でも特別ベスト!…って訳じゃないが、これぞ韓国十八番とでも言うべき胸糞サスペンス。
クソ警察、クソ男、虐げられる女性、男尊女卑、どん底まで叩き落とされ、救いのない…。
韓国サスペンスってどうしてこうも鬱になるものばかり…?
そういうお国柄や人種…と言ったら大問題差別発言になるか。韓国社会全体がそうさせ、映画を通して問題提起している…?
それでもパンチの効いたエンタメにしているのも凄い所。
主人公のジウン。ある事故をきっかけの転落は“不幸”という言葉一つで済まされない。
高校時代は射撃の名手として将来も有望されていたが、ある時交通事故に。
その事故を起こしたのは友人たち。
事故で両親は死亡。ジウンも言語障害になってしまう。
将来は閉ざされ、工場で働く毎日。
嫌味な先輩。上司は正社員雇用と代わりに身体の関係を求めてくる。
ある夜の仕事の帰り、3人の男…もとい、クソ男どもに襲われる。
声を上手く発せないジウンはただただ無抵抗のまま…。
ボロボロの心身で警察へ。被害届を出そうとするが、担当した刑事…もとい、クソ男刑事が全く相手にしない。
上手く喋れない強/姦されたばかりの女性に威圧感な態度。さらには、ジウンはジーンズを履いていて、脱がしにくいジーンズを履いた女を襲うか、強/姦されたなんてウソだろう? こっちは忙しいんだ。
相手が弱い女性であればあるほど侮蔑する。これが韓国サスペンスの警察。
被害届を諦めて、ジウンは自宅へ。そこにいたのは…
強/姦した3人のクソ男の一人。ジウンの住民登録書を拾って忍び込んだのだ。
強/姦されたばかりなのに、また強/姦される。何処まで彼女をどん底まで叩き落とせば気が済む…?
隣室のロクデナシ男は、よろしくやってるなと聞き耳を立てる。
必死に抗うジウン。ガラス陶器を手に取り、男の頭をぶつ。男は死亡。
不幸に見舞われ、どん底に叩き落とされ、遂には人を殺してしまった…。
正直に言えば正当防衛になるかもしれない。が、この国は弱者の味方をしない。
死体を切断。そこを女刑事のカンが訪ねてきて、被害時の話や力になるという。
断るジウン。と言うか今、刑事を部屋に入れられない。
別日。あの時非礼な対応をした男刑事が訪ねてくる。一応詫びるつもりでいたが、隣室のロクデナシ男から“よろしくやってる”事を聞き、脅迫。
強/姦された日に男とヤるのか。やはりウソだったんだな。
揉み合いになり、その時刑事の拳銃が…。
拾い、構えるジウン。撃てるものかとせせら笑う刑事だったが、ジウンは元射撃の名手。撃ち殺す。
不幸と悲劇とどん底と転落の連続。さらにそこに、殺人。
ジウンの中で、何かが壊れた…。
自分を襲った強/姦魔に復讐し始めるジウン。
警察の捜査はまだジウンに行き届いていない。
が、捜査を進めていく内に、ジウンの周りで事件が起きている事、ジウンが元射撃の名手である事、ジウンからカンへプレゼントされた絵に印されたヒント…ジウンが一連の事件の犯人であるとされていく。
それを認めたくないカン。そもそも彼女を哀しき復讐者にしたのは…。
ジウンの復讐は止まらない。それは自分を襲った連中のみならず、友人に暴力を振るったロクデナシ男、カンや警察そのもの、身体の関係を求めた仕事先の上司…自分を蔑み、見放し、貶めた連中や社会全てに。
気持ちや理由も分かるが、ジウンのした事は許されない。
しかし、警察や法律や国のシステムそのものが助けてくれない。
本当に腐り切っている。悪病に侵されている。
こんな社会に何故なった…?
こんな私に誰がした…?
ラストも何と言うか、後味悪さ残る。
ジウンは強/姦魔の最後の一人を襲撃。そこをカンら警察が踏み込み未然に塞がれるが、ジウンは強/姦魔に背中から撃たれてしまう。
病院へ搬送。ジウンは脳死判定され、ドナー提供登録者だった。
彼女の臓器はドナーを待つ者へ。何とそれは、同室に運ばれ重体の強/姦魔に。
病室を訪れたカンは生命維持装置を外す。強/姦魔のではなく、ジウンのを…。
何故…?
少なからずジウンに同情があるのなら、外すのは強/姦魔の方。
それとも、刑事=法の番人としての判断。強/姦魔も許せないが、復讐鬼となったジウンの罪も無視出来ない。カンせめてものジウンの犯した罪への制裁。
それか、命助かる方を優先したのか…?
考え込んでしまう。
誰も知らぬ哀しき復讐劇の顛末を。