「くだなさに、カネをかけると本物になる」土竜の唄 香港狂騒曲 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
くだなさに、カネをかけると本物になる
これはバカにできないオモシロさ。前作から数段グレードアップしている。初笑い向きの正月映画。
もちろん前提として、高橋のぼるの原作コミックがあるわけだが、三池監督と宮藤官九郎のノリの勝利だと思う。こんな中高生レベルの下ネタをケチったら、学生劇団の小芝居にも及ばない。オーソドックスなギャグでありながら、可能な限りのことを実写化してしまったドタバタコメディだ。
"これはテレビドラマでいい"などとは言えない。コストダウン強いられているテレビの現場では、もはやこういうドラマさえも作れない。
それも前作の21.9億円という興行的な成功が生んだ成果である。こんな下らないことに香港ロケを敢行したり、オチのためにVFXを駆使してしまうこと・・・だからこれは"映画"なのだ。製作会社がフジテレビというのは皮肉だが。
主演の生田斗真に、これだけの三枚目を究めさせると、本職のコメディアンの立場がない。やりようによっては1960年代の"植木等"のような格好よさが蘇るのかもしれない。最近はカッコいいコメディアンがいないからね。
キャスティングも贅沢であるが、注目は出演女優陣の浮き沈みかもしれない。本田翼のビミョーな演技は常態化。若さと可愛さで輝いていた自分をなぜ押し殺すのか、最近はどういう方向性を目指しているのかわからない。仲里依紗も最近は出演作がなく、この役柄をメインにしてしまうには悲しすぎる。もっと多くの作品に出てほしい。
特筆すべきは、菜々緒である。モデル出身の女優は多いが、まだ役者キャリアが浅いにも関わらず、これほど幅のある演技を見せられる女優はいない。シュールなコミカルさはデビュードラマの「主に泣いてます」を思い出す。
エンターテイメント作品として充実している。