劇場公開日 2017年3月10日

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「よかったです」ボヤージュ・オブ・タイム あしふぇちさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5よかったです

2017年3月23日
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泣ける

悲しい

知的

とてもよかったです。でも、周りで食べ物を食べる人がいる時は注意してください(小さな音も演出ですから)。

まず、「世の中は 何にたとえん 水鳥の嘴(はし)振る露に 宿る月影」の道元(?)さんの歌が紹介されます。これはこの作品を物語ると僕は解釈しました。世の中は無常。儚い。脆い。

川は流れて絶えず変化していく〔僕たち観客が映画体験する=映画は時間芸術なので“時の流れ”と“川の流れ”(この映画には水のショットがたくさんある)掛けている〕。

無常というのは、それはあっという間感だと僕は思います(僕もあっという間に20年生きてきました)。この映画の尺で地球の誕生からこの時代まであっという間にやったのも“無常”という演出なのだと思います(だから、これは映画という表現でするのは正解だと思います。TIME(時)の芸術ですから。)

母はなんだろうか。僕は映画を見てる最中ずっと考えていました。宇宙?太陽?海?水?炎?とか。この映画には“目”がたくさん出てきます。そして、それは何にでもあるなと。太陽は“目”を持っていませんが光(光ではなくとも)で僕たちを見ているのかもしれない。目があると思えるもの全て母になりうると僕は解釈しました(流石にこれは拡大解釈ですけど)。そして、大きな母がいる(観念的な)。

その、母はぼくたち生命を見ているが何もしてくれません。その、絶望、無常…。ぼくたちが酷いと思っていることも自然なのかもしれない。絶えず生命は殺され、傷つき、痛みを持って暮らしている。

でも、その儚さこそが美しいんだといわんばかりの映像美で映像体験をぼくたち観客はします。桜は満開の時と美しいけれど、その儚く散っていくことも美しいじゃないか的な感じで。人間が愛を育み新しい生命を生み出して、でもそれが終わると後は老いていく。でも、その死に向かうその時間も美しいじゃないかみたいな感じで。地球にある美しく儚いものはぼくたち人間の人生と一緒なのかもしれないと。人間以外の生き物だって傷つけるし、食べる。美しいと思っているものをよく考えれば怖いものですよね。海で何人の人が死んだか、噴火で生命はどのくらい死んだか。そんな弱肉強食とかそんな感じ。でも、やはり美しい。

その美しい瞬間と映像美と掛けられていてこの映画はそんなところまで考えられてすごいな思いました。

この映画は説明映画が好きな人には無理だと思いました(かく言うぼくも無理でしたけど)。これには正解がある!みたいな映画ではないと思います(例えば、トラのショットがあったとしてナレーションで「これはトラです」みたいに説明するみたいな、怒っている表情のショットで言葉で「私は怒っている」と言うみたいな、説明がないと無理って言う人に合わないと思います)。

あしふぇち