「ジャズというジャンルはない。ジャズる人がいるだけだ。」ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad) kossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ジャズというジャンルはない。ジャズる人がいるだけだ。
ジャズ喫茶が生まれた背景には学生運動があった。日本独自の文化でもある“ジャズ喫茶”は一旦入店すると3時間ねばる人ばかり。オーディオ機器にかける金は莫大なものだし、採算度外視といった経営だとは思う。日本全国で600店あるジャズ喫茶の歴史をこの映画は見せてくれたと思う。
映画館の観客はスクリーンからそのまま飛び出してきたようなジャズ好きの人が多かったように感じられ、みな静かに見入っていたというか聴き入っていた。学生運動時代以降、70年代のオーディオブームは確かに覚えているし、その時代が頂点になっていた。CDや配信なんてのは単なる音楽を流すアイテムに過ぎず、アナログレコードを丁寧に扱う姿には懐かしさも覚えてしまった。生音の素晴らしさをレコードで再現するという繊細で大胆な姿勢が伝わってくるのです。
ライブに出演するミュージシャンも有名な人たちばかり。坂田明、村上ポンタ秀一、渡辺貞夫といったミュージシャンの演奏やインタビューも興味深いし、特に印象に残ったのが中村誠一による歌「ニューオリンズ・タクシードライバー」だったな。また、鈴木京香も登場し、森田芳光監督の『愛と平成の色男』(1989)の中でロケに使われたらしい。アニタ・オデイが登場してなかったけど、彼女も見たかったなぁ。
ジャズについての定義も面白いし、その点では小澤征爾のエピソードがとてもよかった。クラシックとジャズの共通点、そこから派生するフリージャズの存在も理解できる。
映画鑑賞前に日本映画専門チャンネルで放映されていた1時間弱のドキュメンタリーを見ていたのですが、その番組ではマスター菅原さんの経歴を紹介したり、音楽評論家としての野村胡堂、そして“あらえびす記念館”のドキュメンタリーでもあった。“Swifty”というニックネームがカウント・ベイシーから贈られたものだったことや、早稲田大ハイソサエティオーケストラでドラマーをやっていたのに、ミュージシャンの道を断たれ、喫茶店の道を目指した話などが聞けた。
オーディオについて、JBLスピーカーが高額なのは当然なのだが、50年前のオープン時期から買い替えてないこと。実はレコード針のほうが金がかかるらしい。その額、なんと家を2軒買えるほどだとか・・・こだわりってすごい!
今はコロナで休業中らしいけど、収まったときには行ってみたいスポットだなぁ。