劇場公開日 2020年9月18日

  • 予告編を見る

「音にひれ伏したオーディオマニアのジャズな人生」ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad) 森のエテコウさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5音にひれ伏したオーディオマニアのジャズな人生

2020年9月21日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

幸せ

萌える

これは、より格好いい音を求めて、音の追求に人生を捧げ続ける孤高の人物のドキュメンタリーである。

そこには、思いの外肩の力の抜けた初老の男性の姿があった。
まるで何かを悟ったような気楽な、しかし颯爽とした姿。
彼には、自分がどう見られるかではなく、自分がどうしたいか。それを貫いてきた自信と安楽感が漂う。

「より格好いい音を求めて。より格好いい音を人に聴かせるために」日々、Up to dateを重ね続ける確固さ。それがカッコ良さの源だ。
彼は、己を捨て、音にひれ伏し、日々より格好のいい音を追求して止まない。
己にこだわらず、音にこだわるが故に、同じ嗜好をもつ人々が自然に集う。
そこはまるで宝石のような別世界。
東北の片隅に半世紀に渡り存在するその場所は、いつしか世界的に名を知らしめる所となった…その名はベイシー

名跡のカウント・ベイシーに一年遅れでお墨付きをもらったその場所は、オーナー不在の営業日が一日たりともないという。それは、そこがビジネスの場ではなく、あくまでも彼の実験場、ガレージである事の証だ。
己の理想を求めて、己の大志を半世紀に渡り貫き続ける所に、東北人の粘り強さをみせつけられる。

日常の生活に囚われず、己の嗜好(或いは志向)を貫く自由さ。それこそがジャズであり、本来、すべての音楽が持つ本質なのかもしれない。
人の感情に直結するはずの音楽。
それが自由であればあるほど、人はより解放されるのだろう。
その解放感を求めて、今日もベイシー(菅原正二)に世界中から人が集まる。

森のエテコウ