「涙が止まらない」彼らが本気で編むときは、 TRINITYさんの映画レビュー(感想・評価)
涙が止まらない
生田斗真がこれほど芝居ができるとは正直驚いた。どうしてもジャニーズタレントを所詮アイドルというフィルターをかけ、俳優としてたいした事がないとアイドル差別をしてしまっている自分に映画をみながら深く反省しまくった。
これまでの辛い人生を乗り越え、それでも懸命に生きている儚い心が女性のトランスジェンダーの男性の悲しさが始終伝わってくる。
セリフもなくただ座っているだけのシーンですら、ほのかにトランスジェンダーの女性?としてその悲しみ漂わせてている生田斗真。
自分の消える事のないだろう悲しみを心にたたえながら、人の悲しみを受け入れるその悲しげな優しい微笑みに涙が止まらない。
私の周りには同じトランスジェンダーの男性がいるので、この生田斗真のトランスジェンダーとしての演技の素晴らしさがとても良く分かる。
難しいテーマである育児放棄やトランスジェンダーをテーマにした映画にありがちな暗さがなく、そこにある悲しい現実を包み込む優しさに満ち溢れているのは、生田斗真が醸しだす優しさのおかげだろうか。
育児放棄された子供が現実を受け入れられず、悲しい自分に気が付かないふりをしていながら、自分を捨てた母を追って部屋に戻って号泣する。
自分を何度も捨てる母親の元に戻る。
どれだけ虐待されても、子供は母親の元にいたいと言う。そんな切なくやりきれない現実。
頑張っても何ともならない現実的なエンディングに汚れていた部屋が綺麗に掃除されてる事で感じさせるほんのり明るいかもしれない未来。
社会の片隅で、なかなかひと目に触れる機会のない、現実に起こっているだろう誰かの悲しい現実を淡々と、そして優しく描き出す監督の力量と優しさが満載の名作映画だ。
こういう素晴らしい作品をノミネートできない日本アカデミー賞て何なんでしょうね?やはりキネマ旬報のが信じられると再確認する作品でした。