「守り、守られ、与え、与えられ…」3月のライオン 後編 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
守り、守られ、与え、与えられ…
人気コミックを実写化した青春将棋ムービーの後編。
前編は見応えはあったが、予想に反して重たい内容で…。
後編も見応えはあった。でも、エピソードがてんこ盛り過ぎて…。
晴れて新人王となった零。その記念対局で宗谷名人と初対局。
川本家の三姉妹と出会って1年。次女・ひなたが学校でいじめを…。
その川本家に、三姉妹を捨てて出て行った父親が現れ…。
来る獅子王戦トーナメント。零だけじゃなく、各棋士たちもそれに向け…。
引き続き、零の苦悩と成長、幸田家との関係、川本三姉妹との交流…今回の対局は色々考える事が多過ぎっ!
それぞれのエピソードが胸打つポイントであったり、ちと消化不良であったり…。
まず、宗谷名人との初対局。いきなりラスボス登場で、一番の緊張と集中がそこで終わってしまった感もしたが、あくまでこれは“記念対局”。ラストはまた別の対局で飾り…。
ひなたが受けるいじめはかなり陰湿。苦しむ清原果耶の演技は涙を誘うが、より一層どんよりと…。一応解決にはなるが、どうも釈然としない。
三姉妹の実父は、自分の事ばかり考えるダメ父。勝手に三姉妹とヨリを戻そうとするが、三姉妹が自分らで出した答え(とビンタ)になかなかスカッと。
獅子王戦トーナメント決勝に突き進むのは、零と因縁あるコワモテの後藤。そんなに彼にある不幸が。対局を一度立ち、駆け付け、号泣する姿に彼の人間味を見た。そして再び対局に戻り、プロとして戦わなければいけない厳しさ。
一つのエピソードで一本の作品として語れるくらいで、どれを主軸としていいのか、かと言って全てが巧みに繋がってる訳でもなく、散漫な印象を拭えなかった。
今回のメインは専ら家族の物語と言われてるようだが、実際は、零は何を守りたいか、それは自分にとってどんなに欠けがえのないものか、だろう。
いじめを受けているひなたの力になりたい零。
でも結局、問題を解決したのはひなた自らであって…。
三姉妹を困らせる実父から、三姉妹を守る。
しかし、守りたいという気持ちが強過ぎて、言ってはいけない事を言ってしまい、溝を作ってしまう。
将棋もそうなのだろう。気持ちが先走り過ぎると、焦って負けてしまう。
相手がどんな手で来るか、考えに考えなければいけない。
守りたい一心の零の手は、ただ一方的でそこまで考えていなかった。
相手がどんな気持ちでいるか。
零は将棋だけに集中しようとするが、暗い闇の中に迷い込んでしまう。そのまま、後藤とのトーナメント決勝へ…。
苦闘の中、零の脳裏にある思いが過る。
川本家の事、後藤家の事、仲間の事、戦ってきたライバルとの事…。
守りたい、勝ちたいと活きまいて来たけど、結局は守られ、与えられて来たのだ。
それは関わってきた皆、全員同じだ。
皆、守り、守られ、与え、与えられる。
それを知って、また新たな一手を打ち進んでいく。
神木隆之介らの体現。
非常に余韻残る今作の主題歌が、それらを包み込む。
ドラマ的に前編より後味良かったので、採点は前編より0・5プラス。
まあそれでも前編後編合わせて抑え気味の採点だが、いつかまた前編後編通して見るのもいい。