「早くに負けを受け入れてさえいれば、むざむざ落とすことのなかった若き命たち。」いしぶみ 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
早くに負けを受け入れてさえいれば、むざむざ落とすことのなかった若き命たち。
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映像はほぼ、綾瀬はるかの朗読。途中、池上彰による少しの現地取材をはさむ。再現ドラマも過去映像もなし。演出は、場面にあわせて並び替えられた木箱のみ。ときに破壊された街であり、ときに逃げ込んだ川であり。
そんな木箱が並べられたスタジオ内で淡々と日記を読む綾瀬はるかの姿は、感情を抑えたがゆえに、その分かえって凄惨な場面を想像させられた。これは監督の意図するところなのだろう。
日記の主、もしくは日記の対象者である広島第二中学の生徒の顔写真が、綾瀬の朗読にあわせて木箱に投影される。時には、写真がないのか名前だけの時もある。写真さえも残されずに地上から消えていってしまった子供とは、どれほど悲しいものだろう。
映画にしなくても、TVのドキュメンタリー番組でも十分なクオリティであるとも思えるが、映画館の薄暗く閉鎖された空間でこそ味わえる感情があったことは事実。
原爆投下の日8月6日にあわせて「黒い雨」を読みながら鑑賞してきたせいもあり、わずかながらも追体験に似た感情が芽生えた。
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