「ホントにホント、ホントの話さ」マイケル・ムーアの世界侵略のススメ SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
ホントにホント、ホントの話さ
アメリカ以外のいろいろな国から、良いところを盗んでアメリカに持って帰ろう、という話。
それだけのことをわざわざ「世界侵略」、と表現したのは、なんだか日本の民放のバラエティ番組みたいなわざとらしさで、少しなえるのだけど、これがムーアの味ということなのかな。
おぼえてるのをいくつか書くと(正確でないので、だいたい)、
イタリア…昼休みは2時間、8週間の有給休暇。その結果、逆に生産性が上がった。
フランス…小学校の給食がフルコースなみの豪華さ。なのに給食費は安い。早期の性教育。
ポルトガル…薬物使用が犯罪では無くした。その結果、薬物使用が激減した。
ノルウェー…死刑制度がなく、刑務所は最長でも20年、しかも、とても快適な暮らしができる。その結果、再犯率が世界で最も下がった。
フィンランド…宿題無し、授業時間は1日3時間。なのに、世界で一番学力がある。
スロベニア…大学の学費完全にゼロ。
後半の、女性の人権のチュニジア、負の歴史教育のドイツみたいな話は急激に眠くなって、まともに覚えてない。後半はすごくテンポが悪くて退屈になる。
普通は逆になるんじゃ?と思うところが、そうならない、みたいな話が多かった。
こういう話があること自体は不思議ではない。既存の社会システムは、昔の慣習にひっぱられているだけで、合理的とは限らないから。
でも、この映画で語られていることはあまりに極端で、常に「ホントなのかな? なんかウラがあるんじゃないかな?」と思ってしまう。
でも、既存の社会システムに、それでいいのか?と疑問を持つきっかけになる、という意味では良い映画だと思う。
マイケル・ムーアというのはくせもので、彼の言うことは全部信用出来ない、みたいな見方はもう共通認識になりつつあるし。そのうさんくささも含めて、楽しいおじさん、て感じかな。
「ほら吹き男爵の冒険」とまでは言わないけど、それに近い楽しさはある。「ホントにホント、ホントの話だよ」で終わる。
それでも、日本のバラエティ番組よりはずっとましだと思う。それは、ちゃんとエビデンス(統計的データや、証拠)を出してるから。
日本の政策論争も、何を言ってるのか理解するだけで苦労する、みたいなものじゃなく、このくらい主張が明確だったら分かりやすいのにな、と思った(もちろん、わかりやすさだけを追求するのは危険だけど、分かりやすく伝える、ということにあまりに無頓着な場合が多いと思うので)。