「欲望の自己消費は大人のマナー。」だれかの木琴 だいずさんの映画レビュー(感想・評価)
欲望の自己消費は大人のマナー。
小夜子の無自覚な執着が恐ろしかった。
海斗の自宅を探し、苺を届け、メール送り続け、インターホンも押してしまう。
思いっきり敵意を剥き出す唯(海斗の彼女)に、嫉妬し、職場へ押しかけ、着ることのない真っ白なゴスロリ系ドレスを買う。そしてそれを海斗の部屋のドアノブに…
怖い。怖すぎる。なんてこと!!!!
わかりますけどね、満たされない欲望が勝手に漏れ出したんだって。でも、もっと欲望を自覚して自己消費しなさいよと思う。それが大人のマナーでしょうよ。
海斗もはっきりキモいとか言ってよと思ったが、言わないんだな彼は。
22歳の頃はやばかったと話す海斗。サイクリングや水泳は、暴力性の発散なのかもと思った。ヤバさを自覚しているから、別のことでヤバさを消費する。真っ当な男の子だ。マザコンとの指摘もあったが、私は海斗はいいと思う。自制が効いていていいと思う。私も耳触られたいわ。
小夜子の欲求不満は、妻として、母としての物足りなさが大いに関係してそうだ。妄想に現れるのは海斗よりも夫が多い。
夫とのセックスやそれに付随するふれあいで欲望を消費できていれば、ストーカーにはならなくて済んだように思う。
小夜子の夫もだいぶ気持ち悪い。会社の女性にモーションかけてみたり(速攻牽制されてたけど)、すれ違った女(でた!河井青葉!あたし的幸薄系のミューズ!)といきなり不倫。そして妻の異常に気付いてはいるが、歯切れの悪い対応。唯にあんたの奥さんストーカーなんだよって言われて、そんな訳ないとはっきり否定(嘘)したその真意はよくわからない。でもまあ、その後の妻とのセックスが盛り上がったようで、何よりと思った。
隣に座っているのにメールで会話する夫婦の変な距離、面白かった。
木琴の音のメタファーが、腑に落ちたような、奥歯にものが挟まったままのような、どう捉えていいかわからないが、全体的には夢中になって見られたし、面白かった。
佐津川愛美がよかった。彼女のキレキャラいい。あのゴスロリ系ファッション可愛かった。もちろん、池松壮亮も。初めて聞いたかも博多弁。なんて可愛いの。大変よかった。常盤貴子の危うさもよかった。40過ぎてますます美しい。
音楽が、さりげなくてとてもよかった。
こちらの感情をガイドしようとする音楽の使い方が最近どうも鼻に付くので。聞こえすぎるカラオケのガイドボーカルみたいって思う。余計なお世話よ。どう感じるかは観客の自由でしょうが。この作品のことではないです。
夫の部下が次の小夜子のターゲットのようだった。逃げて!菊池くん(というのも、この部下役の人、ドラマ重版出来でバイヴスの菊池くん役をやってた人なんです)!!