「2から入って」SING シング タカシさんの映画レビュー(感想・評価)
2から入って
2が素晴らしくて、その熱のまま無印版を鑑賞。こちらも素晴らしい。音楽の素晴らしさは言うまでもないんだけれど、2でもトラブルが描かれない豚のグンターだが一作目でも私生活は一切描かれない。渥美清のような秘密主義者なのだろうか。それであのポジティブなキャラクターなのが気になってしまう。ロジータにも上手く花を持たせるダンディーな一面もあるが、どこかさっぱりした印象がありショーとして評価されるのは嬉しいが、存在そのものの評価は受け付けないドライな態度がクール。彼の家の観てみたらウイスキーの空き瓶だらけなんてこともあり得そうと思ってしまう。
それとネズミのマイクの態度も彼なりのプロフェッショナルな傲慢さと怪しい芸能人然としたヤクザっぷりが楽しい。実際にフランク・シナトラはアウトローな交遊関係があったらしいので、そこもリアルかもしれない。日本でも小林旭や北島三郎などアウトローな方々との交遊は芸能界には付き物かもしれない。
ゴリラのジョニーは甘い声を持っているが父親がヤクザで犯罪をしているなんて、ミスマッチに思うかもしれないが、甘茶ソウルなどもあるのでチンピラ×甘い音楽というのも芯を食っているかもしれない。
なにより、主人公のムーンのいい加減で調子の良い態度も本物の劇場支配人っぽさが妙にある。あくまでもショーとしての興味のみでプライベートに介入して解決したりはしない。その大人な態度が作品全体をクールな印象にしてくれる。ビジネスは甘くないぞ、のような態度。
監督がミュージックビデオ出身とのことで、音楽に対する演出の引き出しの多さも頷ける。出自を活かした作品。ムーンのキャラクターに自身のキャリアも重ねているのかもしれないが、それを前面に出さない上品な態度も素晴らしい。