「キャラ立ちが不透明」SING シング 幸ぴこリンさんの映画レビュー(感想・評価)
キャラ立ちが不透明
正直、かなり期待したテンションで観てしまったので
少しその期待に届かなかった…というべきか、『最高のコンサート・ムービー!』とは思えなかった。
展開がありきたりなのはアニメーションCGの素晴らしさや声優の豪華さで幾らでもカバーしていると思うのだが、個々のキャラクターの立ち位置が最後まで不透明。
ロジータと組む派手なだけのブタ公は結局全然パッとしないまま終わる。家に引きこもって育児と家事に追われ、ろくに話し相手もしてくれない旦那にヤキモキして自分と解き放ちたい彼女の手助けをするシーンも見られない。彼は何の為にいた…?
カス野郎な彼氏とのタッグを解いてオーディションに加わるも彼に浮気されて別れるアッシュも、何かをきっかけに立ち直り、自らの音楽性をグッと掴む明確なシーンも無し。結局彼女は最後まで彼を引きずっていたの?いまいち分からない。
マフィアの父親に「お前なんか今までもこれからも息子じゃない」と面会所でガラス越しに超失言を叩かれたエディ。彼が歌う姿を見た瞬間、お前は誇りだとか刑務所脱走して言いに来る父親。えっ、何このチャラい展開。歌うところ見ればそれでいーんかい。
シャイ過ぎて素晴らしい才能を披露できないミーナも、結局オーディションで1フレーズも歌ってないのにMr.ムーンがコンサートで歌うように何度か薦めるし、意味不明。なんで最初から彼女が歌えるって知ってるんだろうな~。
極めつけは、登場から最後までずっと『ただの嫌な奴』マイク。常に自信過剰でMr.ムーンも彼の才能を褒めていたけど、周りに差をつけるほど素晴らしいか?歌い出したら声がレイ・チャールズかブルース・スプリングスティーンくらいの衝撃は欲しかった。劇場がダメになったのもまるごとマイクのせいなのに、何のお咎めもなしにラストシーンに再び舞い戻ってきて納得がいかなかった。
CGはいうことなしに素晴らしく、劇場の倒壊シーン、イカのフラッシュ・ダンス、ロジータがスーパーでダンスするシーンのオリーブオイルの瓶なんかもう最高に美しかったね。これがアニメーションか!と何度も思わされた。
結局はキャラが確立されていたのがMr.ムーンだけに思えてしまったことが残念。
ひとりひとりを掘り下げてほしいとは思わないけど、中途半端過ぎたかな。
コンサートシーンも、ラストよりは序盤のオーディションのほうが有名曲のラッシュで印象に残る失速映画だった。
洗車シーンIS BEST。