「エンターテインメント一本押し」SING シング 天秤座ルネッサンスさんの映画レビュー(感想・評価)
エンターテインメント一本押し
「ミニオンズ」シリーズで有名なイルミネーション・スタジオの映画作品の最新作。老舗ディズニー・アニメーションがこのところ、ピクサー作品含めて情操教育的な深みを孕んだ作風が増えているのに対し、イルミネーション・スタジオ作品は前作の「ペット」もそして今回の「SING」も、そういった教育的な意味合いよりも、単純に子どもも大人も笑って楽しむ娯楽性を優先している感じ。「ペット」を見た時にはそれを物足りなさに感じ、大人の鑑賞には堪え得ないように思ったりしたけれど、今回「SING」を見たら、ある意味、そういう「娯楽」を真っ向から描き、子どもたちを楽しませ、エンターテインメント一直線に進むのだ!というイルミネーション・アニメーションのひとつの答え、というかポリシーのようにすら感じられて、寧ろちょっと清々しい気分。
はっきり言って、毒にも薬にもならない映画なんだけど、ここまで来ると、あえてそれを貫いているという風にも見えなくない。映画を通じて説教を垂れようなんて無粋なことはせず、2時間を楽しい気分で過ごしませんか?とお誘いを受けたかのよう。うん。これはこれでいいかもしれないし、ディズニー映画とのいい差別化にもなっていると思う。
よってこの「SING」もストーリーは単純明快。ジョークも単純明快。だけどテンポが良くて底抜けに明るくてノリがいい。ほとんどただそれだけが売りの映画でしかない。が、その開き直りがいっそ潔い。洋楽に疎くても絶対知っているようなメジャー曲を次々にカヴァーして、動物たちのユニークな最高のオーディション!って、そのまま「アメリカン・アイドル」×「Glee」って感じで、着想もコンセプトも狙ったものが全部透けて丸見え。それ以上の冒険心も野心も向上心もなにも感じない。ただ、そういったことも自覚した上で、明るく楽しい映画を作っているっていう感じ。
映画として特筆すべき優れた点があるわけではないのだけれど、「気楽に見られて、なにか元気が出るような映画はないかなぁ・・・?」って考えた時に思い出すのってこういう「SING」みたいな映画なんだよなぁと、見終わってまず思った。