「.」ノック・ノック 瀬雨伊府 琴さんの映画レビュー(感想・評価)
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自宅にて鑑賞。リメイク作が続く監督の新作は、実話ベースの『メイク・アップ('77)』が元。ゆったりとした鳥瞰から父の日となる何気ない日常を写し、これから始まる異常な出来事のとの格差が際立つオープニング。(共同)製作総指揮も兼ねた“エヴァン”のK.リーヴスの熱演が際立ち、特に縛られた儘クイズショーごっこをさせられる中、命乞いをする独白は迫力満点。呆気無く迎えるリメイク前オリジナル版のラストを含め細部に亘り変更がなされたリブートに近く、よく指摘される通り『ファニーゲーム('97)』と似ている。60/100点。
・三週間振りの再会から子供達とのバカンスの為、再び離れ離れになる夫婦──髯面で少しがっちりした感のある牧歌的な“エヴァン”のK.リーヴスとは対照的にハスキー・ボイスでどこかスレた雰囲気のある“カレン・アルバラド”のI.アラマンドは良妻賢母に見えずミスマッチ。監督の奥方“ジェネシス”のL.イッツォ、これ迄に監督と組んだ『アフターショック('12)』や『グリーン・インフェルノ('13)』よりややふっくらしている様に思えた。
・単調なピアノ曲からアカペラとなる女性のハミングへと繋がるエンドクレジットにも雰囲気があった。亦、このエンドクレジット内で"Music"として、Kissの楽曲が"Detroit City Rock"と表記されるが、正しくは"Detroit Rock City"である。尚、登場するフレンチブルドッグの“モンキー”は"Otto"とクレジットされている。
・E.ロスの出世作の一つ『ホステル』シリーズ('05・'07・'11)とは、監禁状態における異常な体験と云う共通点はあるものの、物語としての完成度は低く、消化不良な印象は否めない。
・リメイク元のオリジナル版『メイク・アップ('77)』で、(共同)製作者だったL.スピーゲルとP.S.トレイナー(P.トレイナー表記で監督兼任)の二人とアンクレジット乍ら(共同)脚本だったS.ロックの三人は(共同)製作総指揮として、同じくオリジナル版でアンクレジットの(共同)脚本を担当したC.キャンプが(共同)製作として本作に参加している。
・オリジナル版同様、エロもグロも至ってマイルドな描写乍ら、設定を含め時代性を考慮したと思われる細かな変更点は多い割に、中途半端な幕引きを含め、後味は悪くひときわ不快感のみが際立つ(変更されたラストや後味も『ファニーゲーム('97)』の方に近く、もしこれを意図していたなら策に嵌まったと云える)。
・実はオリジナル版には、日本未公開の"Viciosas Al Desnudo('80・英題"Vicious and Nude")"と云うスペイン製の非公式なリメイク作が存在する。
・鑑賞日:2016年6月14日(火)