「ボーンが戻ってきた意味」ジェイソン・ボーン 神社エールさんの映画レビュー(感想・評価)
ボーンが戻ってきた意味
ボーンシリーズは三部作+レガシー観賞済。
最初にこのシリーズを見た時は目まぐるしく変わる舞台と複雑な人間模様で、完璧には理解出来ずそこまでハマれなかったけれど、最新作が公開されると言うことで改めて一作目からレガシーまで見直してみると、映画経験値を蓄えたお陰か、その時々の情勢を反映している側面に気付き、段違いに面白く感じられた。
今回はボーン・アルティメイタムの終わりから9年後と言うことで、あれから一体ボーンはどんな現在を過ごしているかと思いながら観賞すると、目付きが鋭くなりその雰囲気は過去に悩まされ限界間近な様に感じられた。
しかし、いざCIAに追われ始めるとこれまでにも劣らない様な戦闘能力や諜報能力を発揮して、生き生きとしている様に見え、そこを新たなCIAの長官に突かれると自己と葛藤している様に見えた。
最後にはああいう着地点になったけれど、今後のボーンは更に苛烈な環境に置かれそうで不安になる。
今回はスノーデン事件から連なる"国家が国民を監視している"プロジェクトに纏わる話だったけども、アルティメイタムでCIAを変えようと奔走したものの結局はその本質まで変わらず、CIAに新たな風を呼んでくれそうなヘザー・リーも、"朱に交われば赤くなる"の言葉通り体制側になってしまう事がボーンの苦労が無に帰してしまう様で悲しかった。
ギリシャ、アテネなどのロケ地もきっとヨーロッパの難民問題などを反映して決まったんだろうし、前半のデモ隊と機動隊の衝突はまるで今後アメリカがこうなっていくんじゃないかと暗喩している様に見えた。
後半のチェイスシーンでのSWATの車が前方の車を次々と吹き飛ばしていく様はグリーングラス監督のドキュメンタリー風の撮り方もあってか、映画の中の出来事なのにとても衝撃的で、まるで目の前で大事故を見てしまったかのように、ふとももや掌にじんわりと嫌な汗をかいてしまう位だった。
個人的には前半のアテネでのバイクでの逃走シーンがMGS4を彷彿とさせたけれど、マット・デイモンやポール・グリーングラス監督は参考にしたんだろうか…。