「生と性」聖の青春 Takehiroさんの映画レビュー(感想・評価)
生と性
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『聖の青春』(2016)
村山聖棋士が生きて活躍していた頃から、29歳と訃報が載るまでの時期にもメディアを通して触れていたわけだし、大病を抱えながらのおおまかな彼の個人史も知ってはいたけれど、そして本人の顔もメディアを通してみていた人で。今ではネットで検索すれば出てくる事ではあるが。こうして実話をもとにした映画で壮絶な生き方をみると辛い。将棋が出来なくなることと、子供が欲しかったのにできなくなるという二重の苦悶から手術に抵抗し、しかし手術を行い。手術で一度死から遠のいたように思えたが、再発してしまった。実話なのか、羽生棋士に勝利した後で、羽生を誘い、食堂で語り合ったのは。古本屋の娘とも言葉を交わすだけで男女の恋愛物語ではまるでなかったが、そうした淡いエピソードや、なにより子供が出来なくなってしまう状態で手術が必要なんだと言われたときの気持ち。これは恋愛の出来なかった人の恋愛物語でもあったし、最期を看取る村山の両親の夫婦愛が表されているし、途中で羽生が人気アイドルと結婚する挿話があり、将棋という勝負の他の、男女のある人生の風景が、未遂の物語ながら逆に強く感じさせられる。羽生との最後の対戦には看護師が控えていた。20キロ増量して臨んだ松山ケンイチと相手役として東出昌大。見事な演技だった。棋士の仲間たちとの関係性もみせる。生と性、ともかく存在が実在しているのを思い起こさせる。
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