「黒沢清が誘なう愛が行き着く先の物悲しい原野」ダゲレオタイプの女 MPさんの映画レビュー(感想・評価)
黒沢清が誘なう愛が行き着く先の物悲しい原野
愛する者を長時間拘束し続けるサディスティックな撮影方法に固執するカメラマン、そして、それに関わった人々が、生死の狭間すらあやふやな空間を形作っている。その間、映画は日常と非日常が織りなす、時に突発的な恐怖を観客に与えつつ、やがて、愛が行き着く先にある、あまりにも物悲しい原野へと突き進んでいく。日常の中に潜む恐怖の本質を丹念に掘り起こす生真面目さ、そして、恐怖を異次元へ転化させる洗練された感性は、どちらも紛れもない日本人気質。だからこれは、資本や配役や言語に関係なく、黒沢清の個性と立ち位置が際立つ文字通りの"黒沢映画"なのだ。
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