「アメコミ映画史上最も壮大で複雑、そしてリスキーな超大作」アベンジャーズ インフィニティ・ウォー 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)
アメコミ映画史上最も壮大で複雑、そしてリスキーな超大作
衝撃のラスト……なんてのは散々使い古された言い回しではあるのだけど……エンドロールが流れ始めた瞬間に
『……え……嘘……こんな、むごい……』と衝撃を受けて唖然呆然としたのは恐らく僕だけじゃないと思う。
エンドロール後に待っていたのも更なる追い打ち。救いはせいぜい
『MARVELユニバース作品はまだ続くよ!』という宣言くらい……。
おいおい、大丈夫かルッソ兄弟(監督)。これ、荒れるんじゃないか。
来年『アベンジャーズ』4作目=最終作が控えていると知らない人なんてブチ切れる人もいるのでは。
個人的にも、結末までは判定5.0でも良いくらいなのだけど、ラストの衝撃を受け止めきれず4.0判定……。
最終作の出来次第ではもう少し変動させるかもなので、評価は一旦保留としたいが、現時点で
言えるのは、本作がアメコミ映画史上最も壮大かつ複雑、そして最もリスキーな作品であるということだ。
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序盤からソー&ハルク敗北! 挙句は門番もロキもアスガルドの民も死亡……という最大級の悲劇が発生し、
直後にロキの持つ四次元キューブやDr.ストレンジの時間操作能力、ヴィジョンの知性の源などがすべて
〝インフィニティストーン”だったことが判明。ここまででも感情的に色々と整理しきれないのだが、
そこから終盤まで予測不可能なツイストをいくつも加えながら、全MARVEL作品がひとつに繋がっていく。
この映画の何が恐ろしいかと言うと、
・四次元キューブが初登場した『マイティ・ソー』1作目から数えて
7年間14作品で語られてきた伏線の全てをズガガガッと回収しながら、
・30名を超えるヒーロー&ヴィラン全員に物語内での役割や行動動機を与えつつ、
・物量/スケール共にアメコミ映画史上最大レベルを含むアクションもまんべんなく投入し、
・笑いを堪え切れなくなるようなユーモアまで全編に散りばめた上で、
全てを2.5時間に収めるという、クラシックオーケストラも真っ青の複雑で巧妙なアンサンブルである。
鳥肌の立つようなアクションは山ほどあるし、どのアクションもCG満載の映画でありながら肉体的な痛みや
焦燥が伝わる見事な出来(スタークがサノスに顔面を殴り続けられるシーンなんて観てられない!)。
キャラクターひとりひとりの感情も、ひとつもないがしろにされないどころか、物語を
複雑に変化させる要素としてしっかり活かされ、エモーショナルな瞬間がいくつも訪れる。
なかでもソー/ウィッチ/ガモーラ/スターロードは物語上における一種の爆弾だ。
『シビルウォー』でもものすごい情報量を捌きつつ一級エンタメに仕立ててみせた
ルッソ兄弟だが、それを遥かに超える難易度の内容をこうして見事に完成させた。
結末で賛否両論待ったなしの作品にはなったと思うが……素直にスゴい。スゴ過ぎる。
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その巨大かつ複雑な物語の中でも最も時間をかけて描かれるのが、アベンジャーズ史上最強の敵・サノス。
最強の敵!なんてヒーロー映画ではこれまた決まり文句なワケだが、
サノスはアベンジャーズどころかSF映画史でも類を見ない最強っぷり。
腹心5人も各人がアベンジャーズメンバーに匹敵するほど強いのに、サノスは腕力だけでもハルクを上回り、
くわえて〝インフィニティストーン”で空間も時間も操るのだから、ヒーローが束になっても敵わない。
てかもう、完全なチートですよ。何やっても勝てんすよ、こんなの。
アクション映画界で戦えるのはあとチャック・ノリスくらいですよ。
サノスを駆り立てるのは、「資源が枯渇する前に全人口を半分にすれば、残りの半分が幸福に暮らせる」
という思想だ。理屈としては分かるがあまりにも過激なその思想を、彼は本気で実行に移そうとする。
一番恐ろしいのは、サノスはそれを「多くの人々を救う為の正義の行い」と固く信じている点だ。
恐ろしく狂っているが、意志は揺るぎない。『正義』の為には己の想い――娘への愛情――さえ殺す。
だからこそ、彼はこの映画に登場するどのヒーローよりも強い。
個人的な感情に流されず、目的の為に何者だろうと犠牲にする、狂った覚悟がある。アベンジャーズが
彼に勝つにはどれほどの覚悟が必要になるのか? その辺りが次回作のテーマになりそうな予感。
...
さてさて次回作に気持ちを移そうか。
鑑賞直後は「アベンジャーズのこれまでの努力は何だったのか……」という無力感と絶望感に襲われたが、
今回「サノスさんはとにかくヤバい」という点をアピールするには十分過ぎる内容だったわけで、
そういう意味では来年5月公開予定の『アベンジャーズ』最終作の最高の御膳立てになった……と思いたい。
きっとDr.ストレンジの「こうするしかなかった」という発言は、
『 1400万605通りの未来の中でサノスに勝つにはこうするしかなかった』という意味で、
次回作での勝利までを見越しての発言だと思うんですよね! ですよね!?
だってここから何とかしないと、来年公開予定らしい新『スパイダーマン2』も
企画として成り立たないもんね!?(←そんな生臭い事情での本編予測やめて)
ああああ、フラストレーションすごいッ! 来年早く来いッ!
<2018.04.28鑑賞>
みたらしさん、
浮遊きびなごと申します。
コメントありがとうございました!
そちらのレビューに直接コメント返信できないので
すみませんがこのコメント欄で返信させてください。
そうだったんですね、2つのインフィニティ
ストーンについては、これまでの作品内で
すでに言及されていたということですか。
自分は熱狂的なMARVELファンとまでは言えず、
インフィニティストーンがどれほど重要な存在に
なるかが本作まではピンときていなかったので、
鑑賞しても気付かずにいたのかもしれません……。
うぅむ、『アベンジャーズ4』までに復習しとくかな……。