「こんなにもラストシーンで感動したのは、スターウォーズシリーズで初めて」ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
こんなにもラストシーンで感動したのは、スターウォーズシリーズで初めて
もう余計な解説は野暮というのかもしれません。本作は「スター・ウォーズ」の外伝にあたるSF超大作。シリーズの原点となる1作目「エピソード4/新たなる希望」の前夜が語られるもの。「エピソード4」では、反乱軍が帝国軍の究極の兵器「デス・スター」を破壊して一件落着しました。レイア姫がR2-D2に託した帝国軍の巨大要塞兵器デス・スターの設計図は、誰がどのようにして入手したのか。科学者の娘であるタフな女戦士ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)を中心に、その設計図を、命がけで入手した名もなき戦士たちの物語です。
本編で綴られてきた“親子の絆”に加えて、本作の大きなテーマは“自己犠牲”。
“侍”のような名もなき戦士たちが、英雄的な行為を成し遂げます。こういう物語に日本人は、いや、たぶん人は総じて弱いものでしょう。本作ではこれでもかというくらい使命に準じる姿を映し出していきます。スピンオフ企画だし、登場する無名戦士がどうなったところで、将来公開される本編やエピソード4との連関など気にしなくていいから、登場人物たちが犠牲となるシーンが続々と描かれるわけなのです。
唖然、呆然と後半を眺めていて、設計図のファイル名が暗示する終盤の展開が胸を打ちました。「新たなる希望」に繋がる犠牲。こんなにもラストシーンで感動したのは、スターウォーズシリーズで初めてです。
前半はシリアスでやや暗めなトーンの場面が続きます。「スター・ウォーズ」らしいおおらかな楽しさはどこへやら。ただ、冒頭からジンの母親が殺されて、父親とも生き別れる悲劇からの始まりでも、それがかえって親子の絆を強く感じさせて、熱い情感を感じさせてくれました。
やがて大人になったジンは、生き延びるためなら何でもしてきた孤独な戦士となっていました。その元に、行方不明だった父からのメッセージが届きます。帝国軍に拉致された科学者の父は、「デス・スター」の開発に協力すると見せかけ、ひそかに弱点を仕込んでいたのでした。
惑星を丸ごと粉砕する兵器など完成させてはならない!父の思いに応えるべく、ジンは帝国軍の基地にある設計図を盗み出そうと訴えます。反乱軍の指導者たちは及び腰でしたが、前線で体を張ってきたならず者たちが立ち上がるのです。彼らはいずれもなかなかの一戦錬磨で個性的なキャラクターたち。生還する可能性はゼロに近いけれど、ここでひるんだら、何のために戦ってきたのかという侠気にジンときました。
なにやら、聞いたことのあるストーリー展開ですが、それもそのはず。エドワーズ監督も認めているように、黒沢明監督の「七人の侍」の影響を色濃く受けたそうです。
ところで、「スター・ウォーズ」シリーズといえばスリン満点の空中戦シーンが魅力の一つになっています
本作では、ジンと少数精鋭のならず者部隊が敵陣に捨て身の奇襲をかける後半は圧巻の仕上がり。そこに支援に入った反乱軍の航空部隊が戦闘に加わり、従来の空中戦と地上戦も同時進行させて、より緊迫感のあるシーンを見せてくれました。
さらに、特に満を持して登場する悪役ダース・ベイダー!う~ん、懐かしい!「待ってました!」の声がかかりそうな出来栄え。ちょい役かと思いきや、反乱軍兵士との大立ち回りもあり、存在感を見せつけてくれました。
ならず者軍団では、座頭市のように敵をなぎ倒す、盲目の棒術の達人(ドニー・イェン)が印象に残りました。これも黒沢映画へのオマージュなのでしょう。東洋の神秘を体現している彼は、フォースの復活を夢見ていたのですが、本人は残念ながら使えないのです。でもラストの戦闘シーンで、絶体絶命のピンチに陥ったとき、フォースはまだ消滅したわけではないことを体現してくれて感動しました。信じる者の心に等しくフォースの力は宿るようです。
これらの壮大な闘いが「新たなる希望」の冒頭へ見事につながるカタルシスを味わえることでしょう。あの「大仕事」が成し遂げられたのは、ヒーローの活躍だけではなく、チームで奮闘した無名の戦士、無数の兵士の存在があったから。だからルーク・スカイウォーカー、レイア姫、ハン・ソロらは英雄になれたのです。今度「エピソード4」を見る機会があったら、冒頭に襟を正して無数の兵士たちに黙祷してしまうかもしれません。