「迫力溢れる映像と音楽で戦場を再現」ダンケルク みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
迫力溢れる映像と音楽で戦場を再現
本作は、リアリズム溢れる映像による圧倒的な臨場感で、観客に戦場を体感させてくれる極めて独創的で迫力十分の傑作戦争映画である。
本作は、第2次世界大戦で有名なダンケルクの戦いを描いているが、ドイツ軍が英仏連合軍40万人をダンケルクに追い詰めた程度の大雑把な説明だけで詳細説明は殆どない。冒頭、ダンケルクの海岸で只管救助を待つ40万人もの兵士達。その中に、主人公であるイギリス兵士トミー(フィオン・ホワイトヘッド)もいた。これから何が起きるのか、どうなるかは全く展開が読めない。当時の一般兵士がそうであったように、観客にも情報を与えない。ドイツ軍の顔も見えない。戦力もわからない。相手が分らない程に恐怖は高まるとう人間心理を巧みに利用した設定である。
物語は、防波堤(救助艇):一週間、海(民間船):一日、空(飛行機):一時間、という三ヶ所の異なる時間軸で進行していく。三ヶ所の出来事が巧みにシンクロしながら、ダイナミックに結実していく手法は見事であり、見応え十分。リアルな映像で、我々観客は戦場に放り込まれた感覚に陥る。民間船の船長ミスター・ドーソン(マーク・ライランス)、イギリス空軍パイロット・ファリア(トム・ハーディ)の寡黙な生き様、活躍が奏功して、脱出を試みる主人公達の視点ばかりではなく、救出する側の視点もしっかりと描かれ、平面的ではなく、立体的で奥行きのある物語に仕上がっている。
救助艇からの救出を待った主人公達は、救助と沈没の繰り返しであり、修羅場の連続である。突然のドイツ軍の襲撃に主人公達は右往左往するばかり。しかし、それでもなお、彼らは、祖国への帰還を目指して、懸命に生きようとする。画面に大写しにされる、修羅場での彼らの必死の形相に、形振り構わず生きようとする彼らの想いが凝縮されている。
あくまで、カメラは主人公達をリアルに追いかけていくので、台詞は少なく、戦争ドキュメンタリーを観ているような緊迫感がある。時計の秒針音のような背景音が絶え間なく聞こえてくる。迫りくる時間を表現した音とも理解できるが、場面が切迫する程に、背景音は強まり、兵士達の高鳴る心臓の鼓動を象徴しているようでもある。
ラスト。救出作戦は、史実通りの結末を迎える。生き残った兵士たちに老人が呟く、生きてくれただけでいいんだよ、という台詞が本作の主題である“生きる”を示唆していて意義深い。本作は、戦争映画でありながら、“生きていることこそ尊いということ”を強く主張した作品である。
コメントありがとうございます。
映画は多面的なものであり、本作、私は生きるということを強く感じました。
戦争の不条理、戦争そのものなど、観る人によって、強く感じるところが違うのは当然です。それが映画の面白さの一つだと思います。
では、また共感作で交流しましょう。
-以上-
今晩は。
”本作は、戦争映画でありながら、“生きていることこそ尊いということ”を強く主張した作品である。”
私は今作を戦争映画の傑作として、情緒に流れ鑑賞しましたが、このコメントには参りました。
確かにダンケルク・スピリットの根底には、”生きる”がありましたね。
では、又。