「派手なCG演出のウラで、人間の本質をも描いた衝撃作!」キングコング 髑髏島の巨神 YuuuuuTAさんの映画レビュー(感想・評価)
派手なCG演出のウラで、人間の本質をも描いた衝撃作!
舞台は南太平洋に浮かぶとある島。つねに嵐におおわれ、これまで誰ひとり足を踏み入れたことのない未開の地である。
1978年、そんな島に調査団が派遣されることになった。研究者ランダを護衛するため、主人公の傭兵コンラッドは調査に同行する。
一行を待ち構えていたのはキングコングをはじめとする超巨大生物たち!この危険な島を無事脱出することはできるのか!?
キングコングを島の神として描いたスペクタルアドベンチャーだ。
ストーリー自体はシンプルでとてもわかりやすい。巨大生物同士の戦いは、ドでかいスケールの格闘技を見ているようで見応え十分!「ハリウッド映画の迫力ある映像が好きだ!」という人にちょうどいいと思う。
主人公のジェームズ・コンラッドを演じるのはトム・ヒドルストン。マーベル映画マイティ・ソーシリーズでロキを演じていることでおなじみの俳優だ。
同じくマーベル映画でのニック・フューリーやトリプルX:再起動、キングスマンなど出演作を挙げたらきりがないサミュエル・L・ジャクソン、トランスフォーマーシリーズのジョン・グッドマン、ルームで第88回アカデミー賞(2015) 主演女優賞に輝いたプリー・ラーソンなど、豪華出演陣が脇を固めている。
実力派ばかりなので見ていて申し分ない。英語がわからない自分にも、事の緊迫さや苛立ち、喜びなど感情の移り変わりが伝わってくる。中でもヒドルストンの演じ分けに驚いた。ロキと全く雰囲気が違うのだ。特に目つきが。ロキのような狡猾さは全くなく、頼りになる冷静沈着なリーダーを熱演している。学芸会レベルの俳優・女優がもてはやされる日本映画ではこうはいくまい。よくハリウッド映画はお金をかけてリアルなCGを作れるからいい映画になるというが、CGだけの問題ではないだろうと思った。
この映画は前述した通り、娯楽映画として楽しめるが、それだけに終わらないのが素晴らしいところだ。
自分は映画を見て、人間のエゴ、残忍さ、愚かさについて考えさせられるものがあった。劇中、巨大生物に襲われることで、調査団が分裂してしまう。コンラッドが率いる部隊、護衛軍の隊長が率いる部隊、個人行動を余儀なくされる軍人チャップマンの3つに。コンラッドたちは歩を進める中で、キングコングの存在理由を知り、キングコングに対する見方が変わってくる。殺める必要はないのだと。
一方で隊長たちは個人行動を余儀なくされたチャップマンの救出を目指す。人間の脅威であるキングコングの抹殺を目論みながら。
隊長の考え方はある種人間的であると言える。キングコングが島でどんな存在として崇められているかは関係ない。人間にとって脅威ならば殺すだけ。一見非情な考えのようにも思えるが、もし同じ現場にいたのなら、大多数の人が同様の考えをするのではないだろうか。自分の命を危ぶむ存在は恐ろしい。だから場合によっては命を奪う。自分最優先。自分の安泰が約束されて、はじめて人は周りに目がいくようになるのだと思う。
逆にコンラッドの考えは良心的で共感できる内容だ。キングコングは悪い奴じゃなかったので助けようというのだから。映画を見ている限りはこちらの考えに賛同する人が多いだろう。
隊長とコンラッドの考え方の違いは、人間の本質と理想のようなものだ。自分の現状により、物の考え方はいかようにも変わるということなのだろう。
単純な怪獣映画ではなく、人間の本質と理想について考えさせられる映画だった。