「米国チャンピオンまつりの始まり始まり」キングコング 髑髏島の巨神 りゃんひささんの映画レビュー(感想・評価)
米国チャンピオンまつりの始まり始まり
もう、はっきり言って、レジェンダリー・チャンピオンまつりの始まり始まりです。
50代以上のおっさんには、幼い日の東宝チャンピオンまつりを彷彿させること請け合いです。
1944年、太平洋戦争末期。
日米の戦闘機が空中決戦の末、太平洋の無人島に落下する。
一命を取り留めた日米のパイロットは、その島で巨大生物を目撃する。
それは・・・巨猿キングコング。
それから約30年。
ベトナム戦争からの撤退を決めた米軍空挺部隊に命令が下る。
地上観察衛星ランドサットが発見した孤島に調査研究の民間チームが入る。
その運搬と護衛をすること。
しかし、その島とは、あの怪物が棲む島だった・・・
というハナシで、キングコング映画としてはかなり工夫がされている。
まず、副題が示すとおり、舞台は「髑髏島」。
1933年『キング・コング』以来、コングはニューヨークに連れてこられることになっているが、そんなことは端から無理といわんばかりに、絶海の孤島だけに絞った。
そこで繰り広げられる「人間」のドラマは、サバイバルのみ。
おお、単純明快でよろしい。
わかりやすくなったし、ハナシに無理がない。
まぁ、無理はないが、調査団に女性が加わったり、さらにはタンクトップ姿で活躍したりと、いわゆるお約束を用意しているが。
なので、あとは只管(ひたすら)生き延びるだけなんだが、時制を1970年代に定めたので、当時の空想科学冒険活劇のお約束をいくつか忍ばせているのがうれしい。
ひとつは地球空洞説。
地球の内部が空洞であり、そこには太古の世界が広がっているというもの。
エドガー・ライス・バローズのペルシダーシリーズの設定で、『地底王国』のタイトルでも映画化された。
そして、登場する怪物たちは、現存する生物を巨大にし、ある種の特異に進化して巨大化したような生物ばかり。
これはH・G・ウェルズの『神々の糧』を映画化した『巨大生物の島』に通じる。
さらにお約束の、島の原住民と彼らによるコング崇拝。
このあたりのお約束をきちんと入れ込んであるので、東宝怪獣映画に入れ込んだ50代のおっさんは嬉しくなっちゃうわけだ。
島の調査隊には空軍の面々が加わっているので、ただ逃げ惑うだけでなく、巨大生物に敢然と立ち向かっても行く。
かっこもいいし、悲壮でもある。
そして、「敵は自らがつくりだしているのかもしれない」なんて意味深な台詞も登場したりする。
そんな一般的なお約束以外にも、『キング・コング』ならではの見せ場も用意されている。
ひとつは鎖に繋がれたコング。
もうひとつは、コングの掌上の美女。
どちらも1933年版での見せ場で、今回では登場する余地などなかろうと高をくくっていたら、終盤、立て続けに登場する。
いやぁ、この見せ場で「おぉぉぉぉぉ!」と声を上げないと、『キング・コング』ファンではない。
トム・ヒドルストン、ブリー・ラーソンの演技派ふたりも霞むほどのコングの存在感。
いい勝負だったのは、コングと睨みあう猿顔サミュエル・L・ジャクソンくらいか。
長い長いエンドクレジットのあとについている次回「レジェンダリー・チャンピオンまつり」の予告も見逃せない。
「キングは、コングだけじゃない」として登場するのは、あの怪獣。
「地球最大の決戦」も近いということか。