「【未来は…/地味だけど示唆を含んだ作品】」ミッドナイト・スペシャル ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【未来は…/地味だけど示唆を含んだ作品】
地上波(深夜帯)で放送しなかったら、ずっと知らないままの作品だったと思う。
皆さんの評価は低いように思うけれど、これまでに何度となく取り沙汰されてきた終末論や、危機を煽り人々をコントロールしようとする政治など人間の愚かさと、理論物理学でも話が出るパラレルワールドなどSFらしい示唆も含んでいて、僕は結構好きでした。
超能力を備えた少年アルトンと、父ロイ、母サラ、友人ルーカスの、SFという割には、どちらかというと静かな逃走劇だ。
アルトンは何を見せるのか。
(以下ネタバレ)
映画ではカルト教団の終末論は暗示的な程度なんだけど、考えてみたら、僕たちの世界は、ノストラダムスの予言を乗り越え、ミレニアムを迎えても、どこかに終末論を抱えたままだ。
911のテロ、04年のインドネシアの大震災、311の東日本大震災と原発事故、最近の気候変動が原因と思われる頻発する災害などあるたびに、終末論者は危機を煽る。
ノストラダムスを乗り越えたと思ったら、今度は、マヤ暦の記載が終わった後は世界は滅亡すると言ってみたり。もう、これも乗り越えたんだけどね。
映画は、政府の執拗な追跡がメインに描かれるが、政府は人々に何を隠したいのか、何をリスクと考えているのか、さまざまな謎を抱合したまま、アダム・ドライバー演じるNSAの調査員も巻き込んで、アルトンは目的の地に辿り着く。
エンディングも暗示的で、SF作品だが決して娯楽的ではない。
想像力を要求しているようだ。
伏線の回収とは一定の距離を置いた、この暗示的なエンディングが、評価を分けているのではないだろうか。
整然として、美しいパラレルワールドの景色。
終末論や恐怖を煽るより、もっと他に選択肢はあるのではないのか。
それが、この作品のテーマなのだ思う。