「何かが著しく欠けているが、人間ドラマは素晴らしい」ミッドナイト・スペシャル ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
何かが著しく欠けているが、人間ドラマは素晴らしい
『MUD』や『ラビング』のジェフ・ニコルズ監督が放つSFミステリーだが、日本では劇場未公開でDVDスルー。安易な設定で結末も弱いが、その一方で「人間ドラマ」としては見応えがある。
もしかすると本作は、ニコルズ監督が『テイク・シェルター』のイメージをさらに壮大に描いた作品なのではないか。マイケル・シャノンが少年を抱き上げて走る姿は『シェルター』を彷彿させるし、得体の知れない何かが迫り来る不安を刻んでいる点も似ている。ただ、本作はもっと娯楽性を帯びた作りになっているため、それに見合うだけの「手応え」が欲しかった。
とはいえ、この監督の映画はいつも、自分の命以上に大切なもののために奔走し続ける大人の姿が描かれるが、その役目に担うシャノンとエドガートンの名演はとてつもなく素晴らしい。彼らを見ているだけで十分なドラマを堪能した気分になる。何かが著しく欠けているが、なぜかそれを含めて愛おしさを感じる。本作はまさにその類いの「知る人ぞ知る」作品と言えそうだ。
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