袴田巖 夢の間の世の中のレビュー・感想・評価
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理不尽な冤罪への怒り以上に前向きな希望
冤罪によって48年間もの間、死刑囚として獄中生活を強いられた袴田巌さんの、釈放後の日常をカメラで捉えた貴重なドキュメンタリー。冤罪の理不尽さを社会正義で持って断罪するという方向の作品ではない、袴田さんと姉の秀子さんの淡々とした生活を中心に、徐々に人間性を回復していく様子を詩的に捉えている。
映画序盤の袴田さんの姿は、死刑囚として48年間も閉じ込められると、人間の尊厳はどこまで破壊されてしまうのかまざまざと見せつけられる。何を話しかけてもきちんと認識できていない。完全に支離滅裂で、彼の心は現実世界にあらず、自らの作り上げた世界に閉じこもっている。入所中は、ずっと独房の中を歩き回る癖があったが、その癖が出所後も抜けない。そんな袴田さんの姿を観て冤罪の残酷さに戦慄する、しかし本作はそこからの袴田さんの回復を追いかける。徐々に回復していく袴田さんの姿に希望を感じる。
緩やかな時間の中に垣間見える残酷な社会の業
本映画は袴田巌さんの拘置所出所から約一年を追ったドキュメンタリーです。袴田さんとお姉さんはそのことを知らなければこの一年騒がしくも極めて穏やかに過ごしているように見えます。
しかしその穏やかな空気の中からも、長年に渡る袴田巌さんとお姉さんの苦しみが垣間見られ、人類の社会構造上どうしても発生する冤罪の社会の業がずしりと来る映画です。
2時間前後でドキュメンタリー映画の作りとしては冗長ですが、観る機会を得てよかったです。番協にもなりました。
警察検察の人間もヒトの子ならば
一度自身の胸に手を当て自問していただきたい。
今、罪を追求している人間が、本当に罪を起こしたと
言える根拠は何なのか?
その根拠に基づきその人間を貶めることが正しいのか?
裁判判決と呼ばれるものはおおよそ全世界を通貫する法と乖離したものが多く、大概は関係者の多数決による利益が優先となる。
所謂エゴにより犠牲になり、
熊のように自宅内を歩き回り
新興宗教の祖のような妄言を繰り返す人間
となってしまった。
袴田さんを日常ベースでドキュメントした意欲作
機会あるごとに観ておきたい映画🎞
イリスト風味パンを、ちょうだいまし。
黙々と歩き続ける習性が身に着いた、50年近い刑務所生活。いまだ健常な姉との会話は、どこか拙い。妄言もたまにこぼれる。すぐ目の前に常にあった、自分の望まない死の恐怖が彼をそうさせたのだ。ああ、誤った司法は、この人をここまで壊してしまったのか、と心が痛んだ。親族や支援者を含め、会いに訪れる人たちは皆笑顔なのだが、それは釈放された今だからこそ。この人たちだって、ずっと苦しんで戦ってきた人たちなのだなあ、としみじみと見入った。
でっち上げ捜査で捕まって48年。その長い長い時間を奪われることを、あなたは想像できますか?それだけで僕は気が狂いそうだ。袴田さんの足の親指の巻爪が、脳裏から離れない。
『私が長い獄中生活で学ばざるを得なかった「自由」というものは
このような強烈な無念さと一種の眩しさをもっている
私はあらためて自らに質問しつづけている
お前は罪のない身でありながらいつになったら自由を取り戻せるのか』袴田巖
深い! 優しい映画。笑えるけど辛い。
冤罪という重いテーマの映画なのに、なぜか優しく温かく、
笑っていいのかしらと思いながら、笑ってしまう。
ドキュメンタリーって敬遠しがちでしたが、これは思っていたドキュメンタリーとはちょっと違ってて、まるで劇映画のよう。
また観たい作品。
周防正行監督や、香川リカさん、谷川俊太郎さんなどが応援している映画で信頼できると思って観に行きましたが、これは歴史に残る1本。
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