劇場公開日 2016年12月23日

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「迫られる決断。現代の戦争が映し出す、それぞれの葛藤。」アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場 映画コーディネーター・門倉カドさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5迫られる決断。現代の戦争が映し出す、それぞれの葛藤。

2017年1月19日
PCから投稿

悲しい

興奮

難しい

【賛否両論チェック】
賛:リアルタイムで送られてくる対テロ作戦の映像を前に、それぞれの立場から決断を迫られる軍人や政治家達の葛藤が描き出され、現代の戦争のリアルを突きつけられるよう。サスペンス感満載の緊迫した雰囲気の中でも、命を守ろうと奔走する人々の、重厚な人間ドラマとしても楽しめる。
否:「ドローン・オブ・ウォー」のような、ドローン攻撃そのものに対する是非を問う内容ではないので、イメージしていたものと違うと感じる人もいるかも。

 本作同様に、ドローンによる攻撃を扱ったイーサン・ホーク主演の「ドローン・オブ・ウォー」では、〝ドローンによって、安全な母国から攻撃をする行為”そのものに焦点が当てられていたのに対し、本作ではどちらかというと、その先に有る攻撃によって生じる様々な被害や影響に焦点が当てられ、各国の軍人や政治家を巻き込んだ議論へと発展していく様が印象に残ります。片や政治家は、起こりうる世論等からの政治的な利害を真っ先に考えて強硬論を渋り、片や軍人は目の前にある脅威を防ぐべく、1分1秒を争う決断を迫ろうとする。両者のそのせめぎ合いに、現代の戦争のリアルさが浮き彫りになっているようです。
 同時に、そんな中でも人間としての本来の理性を垣間見せるドローンのパイロットや、罪のない少女をなんとか助けようとする現地の諜報員の奮闘等、観ていて感慨深い部分も多くあります。
 サスペンスとしても観られますし、重厚な人間ドラマとしても考えさせられる、そんな作品といえそうです。

映画コーディネーター・門倉カド