「何も解決していないけれど。」ブランカとギター弾き maruさんの映画レビュー(感想・評価)
何も解決していないけれど。
「大人は子供を買えるのに、子どもは大人を買えないの?!」は、痛烈な叫びでした。
ラストも、ギター弾きとともに暮らすストリートの生活を選んだ。それは、決してハッピーエンドではなく、結局、「誰も救われていない」。
ヒロインの「帰る場所=家=ギター弾きのおじさん」を見つけた、そのときの満面の笑顔で終えた映画だが、「誰も救われていない」。家のない実情は変わらず、お金もない、行く当てもない。
でも、少女には、進むべき人生の道が、一筋の光が見えてきた。
「歌」で認められたことが、「自分の存在」を認めてもらえた経験となった。母に捨てられ、その日暮らし、自分より年下の子どもにも容赦しない弱肉強食の世界で生きなければならなくなり、人間としての社会性より、動物的本能で生き延びてきた少女。はじめて、人としての扱いを受けたきっかけは、歌、だった。そして、その「自分の存在」を引き出してくれたのが、盲目のギター弾き。
盲目のギター弾きが、結果として導いてくれた、自分で見つけた「一筋の光」を見失わぬよう、彼女は『生きるなら、どう生きるか』ということを孤児院で考え、養子を期待しながら他人に選んでもらうより、『自分で選んで、生きる』ことを決めた。
いたいけな少女の選択の瞬間が、とても愛おしく切なく、美しかった。
それでも、残酷な現実は変わらない。
それでもそれでも、笑顔でいる少女。
ほんの少し、手を差し伸べてくれる人はいるけれど、基本的には、救いはない。
自分で自分を救うしかない環境、狡猾に生きるしかない世界が、地球にはある。ただそんな印象だけが残った。ヒロインの笑顔にハッピーエンドを感じてしまうことはなく、これからの道のりを考えると、胸が痛くなった。
でも、「人生は選べる」ことを心でわかった人間は、世界が違って見える。
それがわかっただけでも、彼女のこれからは、だいぶ明るいはず。
『暗く険しい』道のりは、ケガばかりだけど、『明るくて険しい』道のりなら、ゴールまでたどり着ける気がする。
ちゃんとした映画でした。