「昨今の映画が平気で用いる"中抜き"への明確な抗議」LOVE 3D MPさんの映画レビュー(感想・評価)
昨今の映画が平気で用いる"中抜き"への明確な抗議
「アレックス」ではレイプの一部始終を描き、「エンター・ザ・ボイド」では麻薬常習者の幽体離脱を終始一人称で追う等、常に映画の常識を打ち破ってきたギャスパー・ノエ。しかし、本作は過去のどの作品よりも打ち破ろうとした壁は明確だ。全編に渡ってセックスの詳細を描き続けることで、昨今の映画が当たり前のように用いてきた、"そこは適当にスルーする"という悪しき習慣に疑問符を呈しているのだ。男女が関を切ったようにキスし合い、もどかしそうに服を脱ぎ合い、ベッドに倒れ込んだ後、肝心の部分はスルーして、満足したような、あるいは欲求不満の表情でシーツに包まるという、体のいい中抜きにノエは怒り心頭なのだ。するとどうだろう!?過剰なセックス描写があらゆる心理描写にも増して恋愛の本質に迫って、観客に予期せぬ感動をもたらしてくれるではないか!?3Dという徹底したこだわりには、やはり通常のハリウッド映画にはないフランスのエスプリと、創作の自由が感じられる。
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