「【米ソの冷戦下で起こったハリウッドでも行われた赤狩り。人権、名誉、仕事、命を失った人達の中で、稀代の名脚本家ダルトン・トランボが後世に残る名脚本を書く姿を、彼を支えた家族の姿と共に描き出した逸品。】」トランボ ハリウッドに最も嫌われた男 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【米ソの冷戦下で起こったハリウッドでも行われた赤狩り。人権、名誉、仕事、命を失った人達の中で、稀代の名脚本家ダルトン・トランボが後世に残る名脚本を書く姿を、彼を支えた家族の姿と共に描き出した逸品。】
ー 赤狩り:狭義では1940年代末から50年代にかけて、共和党議員ジョセフ・マッカーシーらによって、”共産主義者”とレッテルを貼られた人たちがはっきりとした根拠なしに攻撃された時代。ドナルド・トランプを育てたとされる悪名高いロイ・コーンがジョセフ・マッカーシーの右腕で有った事は、有名である。ー
◆感想<Caution!内容に触れています。>
今作では、自由の国アメリカで70年前にこのような非人道的な事が行われていた事を、そしてハリウッドでも行われていた事を描いているのである。
但し、今作ではダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)達、ハリウッド・テンを生み出し、ブラックリストを生み出した当時の政治状況を明らかにする中で、赤狩りに加担したゴシップジャーナリスト、ヘッダ・ホッパー(ヘレン・ミレン)などを登場させているが、主としては闇の時代においても、名を変えて脚本を書き続け、別名義でオスカーを二度も獲得したダルトン・トランボを支え続けた、妻クレオ・トランボ(ダイアン・レイン)を始めとした家族が彼を信じ、葛藤の中支える姿を描いているのである。
今作を観ると、高名な俳優やその後大統領にまでなった人物が、非米活動委員会のメンバーだった事が分かるのである。
だが、ダルトン・トランボが、自分の脚本が名前が出ない事が分かっているのに、一日18時間、週7日間働くのである。そして、漸く70年代にその名誉が回復された時に、彼が満場の観衆の前で行うスピーチは感動的である。
<トランプが再び大統領になり、日本を含めた世界は成り行きを見守っている。だが、私は彼が掲げる自国ファーストという思想や、力で相手を屈服させる政治手法が大嫌いである。望むべくは、再び赤狩りの様な思想統制が、ロシア、中国に次いでアメリカでも起こらない事を願うのみである。
今作では、突然”共産主義者”である(あった)という事実のみで(劇中で描かれているように多くの人は無関係である。)人権、名誉、仕事、命を失った”赤狩り”という思想統制の恐ろしさと、それに屈せずに家族と共に戦った稀有な脚本家の半生を描いているのである。>