劇場公開日 2016年8月5日

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「あらゆる面で難しい映画」ニュースの真相 SHさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0あらゆる面で難しい映画

2016年8月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

難しい

ケイト・ブランシェットとロバート・レッドフォードの演技は素晴らしい。最初はむかつくだけだったメアリー・メイプスとダン・ラザー(─あくまで映画の中の見解─)、それがいつしか感動へと導かれていた…遠い記憶──ピーター・バラカン氏がCBSニュースを紹介していた番組で実際にダン・ラザーがアンカーを降りると宣言していた映像がうっすらと蘇る──あの時はその真意は理解できていなかったわけで、今こうしてリアルに再現されたものを改めて見ると、その決断に隠された意味深さを思い知らされる。
ジャーナリストとして権力に立ち向かう姿を、強く、感動的に仕立て上げられているかのように、個人的には見えた、何ものにも屈しないと─。そういう姿勢は理解できるし、正論であり、あるべき姿だろう。
ただ、真偽がはっきりしないものを一方的に決めつけて報道してしまった責任というか落ち度というのだろうか、それは計り知れないもの。ましてや、その報道が大統領選に影響する要素は大きかったわけで、報道する側の勇み足は否めない。
確かに、再選を目指す現役大統領のスキャンダルとなるとニュースソースの価値は絶大であり、事実とすれば大スクープに違いない。飛びつく気持ちも、どうしても報道したいと思ってしまう気持ちも、分からないでもない。しかし、それが事実ではないとしたなら…
GWブッシュ元大統領の評価はあまり芳しいものとは思えないし、個人的にも好ましく思っていない。この映画においても、ブッシュ氏は半ば軍歴を詐称していたような流れでつくられており、それが認められないのは確固たる証拠がないだからだと言わんばかり。しかし、(あくまでも映画を見るかぎり)詐称を証明するファクターは皆無であり、CBSが流した報道は現時点においても誤報と言わざるを得ない。故に、それに関わった者たちの退場も、残念ながら正当なこと。感動する前に、批判されても仕方がないと捉えるしかないのではなかろうか。
映画は、とにかく感動させようと、ジャーナリズムの精神を貫き続ける者たちの姿を称えていたように思えた。その巧みな演出に思わず涙してしまうのだが、彼らがしてしまったことは決して評価されるものではない。疑惑を追及する姿勢は評価できるとしても、その結果で人々を惑わすようでは、それら情報は害でしかない。
メアリー・メイプスもダン・ラザーも、この事件以降、報道に関わることが出来ないでいる事実があるわけで、そのことからも、ケイト・ブランシェットとロバート・レッドフォードは称えることが出来ても、前者2人を称えることは、残念ながら出来かねる。
映画の内容も、映画自体の評価も、なかなか難しいところがある。

SH