ブルゴーニュで会いましょうのレビュー・感想・評価
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【ブルゴーニュワイン農家の世代間での醸造法の考え方の違いを乗り越え、求めるワインを作る様と家族の再生を描いた粋な作品。】
■頑固な父フランソワ(ジェラール・ランヴァン)と反りが合わず、ワイン農家を継がずにワイン評論家として名を上げたシャルリ。
だが、ある日実家が経営危機になっていると聞き、駆け付けるが頑固な父と醸造法に関して意見が対立する。
父は、息子にワインづくりを任せて、海岸沿いで隠居生活を始めようとする。
◆感想<Caution!内容に触れています。>
・面白かったのは、シャルリが昔ながらのワイン醸造法に拘っている所である。普通は逆な気がするのだが、彼は足で葡萄を潰し発酵させ、添加剤も入れない醸造法を選ぶのである。
きっと、彼には経験はなくとも、ワイン評論家としての舌の確かさがあったのだろう。
・臨家のコレマタ頑固な、けれども一流の腕を持つブランシュ(アリス・タグリオーニ)が、娘のアメリカ人との結婚を認めない姿も、フランソワに似ているのである。
・だが、シャルリは見事にブランシュを唸らせるワインを作り上げる。そして、そのワインを実はフランソワが、孫に密かに継がせて飲むシーンと、その後息子と海辺で和解するシーンは良かったな。
<ブランシュの娘と、シャルリが恋仲になったという事は、このワイン農家は安泰じゃないかなと思った、粋な作品である。
それにしても、ジェラール・ランヴァンは、良い顔をしているなあ。
というか、天気を相手にモノ作りをする人達って、皆、良い顔をしていると思っているのは、私だけかな。
今晩は、ロアルドダールの名短編”味”か、開高健の”ロマネ・コンティ・一九三五年”を読もうかな。>
リアリティが沁みる
ストーリーも普通で特にお目当ての俳優さんもいないけどとても好きな作品でDVDを購入。主人公は都会で仕事に成功し、実家のワイナリーの隣の娘を好きになるが、彼女にはアメリカ人の婚約者がいる。お互いに理想の人生を手にしたつもりでいたが、ワイナリーを守り受け継いでいくという選択に自然に導かれ、最高のパートナーに気づく経緯にリアリティがあって、結末に観ているほうも安堵と幸せを覚える。歴史ある土地や、先祖から流れる血の力のようなものを感じ感動した。
大事なのは、他のマネをしないこと。あとは忍耐と辛抱よ
映画「ブルゴーニュで会いましょう」(ジェローム・ル・メール監督)から。
ワイン評論家としてパリで活躍し、有名になっていた主人公が、
実家の老舗ワイナリー倒産の危機で自らがワイン作りをすることになる。
それはある意味、大きな賭けとも言える。
ワインの味がわかるから、ワイン作りができるとは限らない。
だけど面白いのは、素人だからこその発想が、可能性を拡げていくこと。
経験がモノを言う(はず)の世界で、新しいワイン作りの試行錯誤が、
周りの人をまきこみながら、展開される。
自然災害からブドウを守るために、畑にシートを被せるシーン。
誰もが想像もしなかった行動で周辺の関係者を驚かせながら、
結局は、何も知らない浅知恵で失敗に終わるが、主人公はへこたれない。
心配して近づく女性に「ガンジーの言葉を(知ってる)?」と彼は訊ね、
「いくつかは・・」と答えた彼女に、この言葉を紹介する。
「最初は無視、次に笑われ、最後はマネされる」
新しいことに取り組もうとする人にとって、とても大切な教え。
そしてまた、これこそもう一つ、この作品に流れる考え方だと感じた。
いつの世も、どの分野でも同じことが繰り返される。
隣のワイン畑で40年間最高のワインを作り続けている女主人の言葉は
さらに成功する秘訣をこう付け足している。
「大事なのは、他のマネをしないこと。あとは忍耐と辛抱よ」
「最初は無視、次に笑われけれど、他のマネをせず、
忍耐と辛抱でやり続ければ、最後はマネされることになる」
だからこそ、新しいことへのチャレンジは面白いのかもなぁ。
ワイン版「夏子の酒」
ずいぶんと懐かしいたとえを出してしまったが、ワイン版「夏子の酒」とでも言いたくなるような感じのストーリー。実家を出たはずの息子(著名なワイン評論家)が、父親が営むワイナリーを立て直すために実家へ帰り、新しい(というより原点回帰)やり方で素晴らしいワインを作り出す、というハートウォーミング・ムービーだ。
ただ、この映画に関しては、テレビドラマ的というか漫画的なご都合主義が付いて回ってどうしても気になった。主人公はずいぶんとあっさり実家に戻ってくるし、葡萄を育てる七転八倒ぶりも実に甘い。シートを張って嵐から守るやり方こそ失敗に終わったものの、収穫時期は正確に判断できたし、なんだかんだで巧いこと失敗なくいい葡萄が作れてしまっているあたり、なんだか物足りない。それで結局一年目で素晴らしいと絶賛されるようなワインが作れてしまうというところにも、腑に落ちない部分が残った。
一番は、葡萄を育て、それを一級のワインに仕上げる、という作業の大変さやこだわりのようなものが、映画から感じられないところだろうか。ワイン造りの難しさ、奥深さ、そして感じる充実感と達成感、みたいなものがこの映画には決定的に不足していたように思った。その代わりに描かれるのが、幼馴染とのロマンスというのはあまりにも頼りないし、こういうところが実にテレビドラマ的で面白くない。頑固な父親との関係も中途半端だ。
ただこの映画のワインのテイスティングのシーンはよかった。テイスティングという視覚的には実に地味な作業を、とてもアグレッシブに撮影していて、映画で人々がワインを口に運ぶシーンは、なんだかとてもワクワクする気分だった。
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