「自分の居場所探し」シャザム! HALU6700さんの映画レビュー(感想・評価)
自分の居場所探し
元々は、この『シャザム!』こそが、DCコミックのヒーローであるスーパーマンのバッタものとして、その人気に便乗して英国のフォーセット・コミックスから本家本元の『キャプテン・マーベル』として誕生したヒーローでしたが、見かけがスーパーマンのソックリの模倣であり著作権侵害だとして、和解したその後、DCコミックが版権を買い取ったという経緯がある、まさにツイていないヒーローだったのです。
その際には、当時誕生したばかりのMARVEL社も「キャプテン・マーベル」という名前のヒーローの存在には、かなり快く思ってはいなかったものの、大手のDCコミックに著作権侵害の争訟の先を越され口出し出来なかったところ、一旦、DCコミックとフォーセット・コミックス間で和解が成立し、キャプテン・マーベルの出版を停止し、コミック業界からも撤退した間に、そのキャプテン・マーベルの不在に乗じて、1967年にMARVEL社が自社名を冠した『キャプテン・マーベル』を刊行し始めるといった、一時期には、DC社にもMARVEL社にも双方に『キャプテン・マーベル』が存在する状態が続きましたが、同じ名前のヒーローの存在が非常にややこしい事態も生じたため、このツイていないバッタもののヒーローを拾った大手のDCは、元々の名前である「キャプテン・マーベル」から『シャザム!』といったヒーローにリニューアルを行ったという訳でした。
そう言った複雑な大人の事情によるヒーローの変遷の経緯はさておき、ヒーローとは、正義やその力の意義などに悩むものとして、従来からアメコミ・DCコミックの実写映画化計画であるDCEU=「DCエクステンディッド・ユニバース」においては、『マン・オブ・スティール』のスーパーマンをはじめ暗くて重いトーンがヒーローの世界を支配していましたが、今回のDCコミックが贈る新ヒーローは、突然、勇者にされた14歳の少年が活躍する底抜けに明るい『シャザム!』の登場です。
で、この「SHAZAM」とは、ソロモンの知恵、ヘラクレスの剛力、アトラスのスタミナ、ゼウスの全能、アキレスの勇気、マーキュリーの神速の、それぞれの頭文字を採った頭字語でした。
ここからも、このヒーローの特徴が分かってくるかも知れないですが、なんと、このシャザム!は、あのスーパーマンと対等どころか上回る力を持つらしいです。
幼い頃に生き別れになった実母を訪ねて三千・・・。じゃなくて、里親から里親へと転々と渡り歩く問題児ビリー・バットン(アッシャー・エンジェル)。母親を探し当て自分の居場所を得たいと願っていましたが、とうとうフィラデルフィアのグループホームに入ることになるのでした。
そこにはヒーローオタクで足の不自由な障碍者のフレディ、誰にでも抱きつくアフリカ系アメリカ人のダーラ、ゲーマーでハッカーでもあるアジア系アメリカ人のユージーン、無口でガタイがデカいペドロ、MIT工科大学に進学直前のメアリーの5人の孤児が一緒に暮らしていましたが、こんなところからも直ぐに逃げ出してやるぜと、彼らとも距離を置いていましたが、学校で、障碍者のビリーを狙ういじめっ子たちの行動を黙って見ていられずに仕返しをしてしまった後、地下鉄に乗って逃走。地下鉄が停車すると、そこは洞窟の中。謎すぎるヒゲもじゃの魔術師シャザムに出会い名前を言うように半ば強要されるのでした。
そこで仕方なく「シャザム!」と呼ぶと、なんとビリーは、スーパーヒーローの姿(ザッカリー・リーヴァイ)に変身してしまうのでした。
底抜けに明るいシャザムですが、子供たちが主役なのでMARVELで言えばスパイダーマンの立ち位置に相当するのかも知れないですが、コメディ要素が過多なこともあり、また前述したように突出したパワーを持つことからも従来のヒーロー像からは独立した感が際立っているかも知れないですね。
お話しの展開的には、この後、ヴィラン(悪役)である、また謎すぎる科学者ドクター・シヴァナ(マーク・ストロング)に狙われるビリーが、グループホームの子供たちとも信頼関係を育みながらも、予期もせずいきなり勇者にされた彼がヒーロー(シャザム)の意義を知っていくといったお話し。
シャザムの強さの程度を調べながらYouTubeにアップするヒーローオタクのフレディは、まさに今時の子供風で本当に面白い!
そのシャザムの秘めたそのパワーを引き出す練習の際の選曲がQueenの「ドント・ストップ・ミー・ナウ」というのも洒落ていて良かったです。
そして、一方、自分だけは親に捨てられたとは思っておらず、グループホームの仲間達ともいつまでも馴染もうとしないビリー。彼は、それからも自分の居場所を探していました。
また他方で、子供の頃から父親や兄からほとんど愛情を受けずに育ったヴィランのドクター・シヴァナは、はなっから信用などされずに40年以上も魔法の世界にのみ自分の居場所を求めているのでした。
この二人共に家族愛や自分の居場所を求めているという共通項目がありながらもその道が大きく分かれてしまう。
その人生の対比は鉄板ながら、「自分の幸不幸を決めるのは他人様ではなく自分自身にあるのだ。」というメッセージとして、とても説得力を持つ話となっていました。
強大な力を持つ者はその力の使い道を問われがちですが、ヒーローものにはお馴染みの主題ですが、ここでもそれが生きています。
ザッカリー・リーヴァイが演じるシャザムの見た目がダサダサめのオッサンなのも落差があって面白い。
ビリー少年が試練を乗り越えながら成長していく物語としても普遍的な輝きを魅せてくれた作品でした。
そしてDCEUシリーズ作品の『ワンダーウーマン』『アクアマン』と同様に、今作では他のDCEUキャラは乗り入れていない。
ただ、都合2回のオマケ映像には、エンディングロールで、シャザムと一緒に、ある大物DCEUキャラの首から下が映っていましたし、エンディングロールの最後には、シャザムが金魚と意思疎通を図ろうとするシーンにもニヤリとさせられましたし、何よりも、エンディングロールの背景画がジャスティスリーグのDCEUキャラとシャザムが絡んでいるシーンがコミカルに劇画風に描かれていてとても面白かったですね!
私的には、近年観たDCEUキャラものの中では、最高傑作じゃないの?!くらいの面白さでした。
デッドプールほどのブラックジョーク満載でもないし、日本語吹き替え版に菅田将暉くんや福田雄一監督の監修など彼らに頼らなくても充分にウケる映画だと思いました。
※因みに、私はもちろん字幕版で観ました。
私的な評価と致しましては、
ビリーがシャザムになれて、シヴァナがなれない根拠の部分が乏しい点で、若干減点をしますが、五つ星評価的には、ほぼ満点に近い★★★★☆(4.5)の四つ星半評価とさせて頂きます。
アベンジャーズの鑑賞前の予習なんて今からじゃ間に合わないよ・・・。という御方々は、是非ともこのDCEUシリーズの新ヒーロー『シャザム!』においでませ(笑)。