「全然イケる」ザ・フラッシュ R41さんの映画レビュー(感想・評価)
全然イケる
ヒーロー フラッシュ
雷の呼吸と加速装置を合わせたようなキャラ
何も考えなくていい作品だと思い酒を片手に見た。
ところが、ヒーローは単なるモチーフで、彼の心の傷がこの作品の焦点となっている。
まだ若者の彼は18歳の彼をたしなめるが、実際は大きく違うことはなかったのだろう。
母の死と父の犯行の嫌疑 裁判
アメリカ社会でもこんなにも長く争われているのは若干不思議に思うが、とにかくヒーローになってしまった彼にも家族の問題は残ったままだった。
さて、
この作品に登場するジャスティスリーグというヒーロー軍団
それは架空でアメリカ人の夢でもある。
そこに登場した昔からあったヒーロー フラッシュ 彼の物語
ここに主人公フラッシュであるバリーの家族の問題というか事件と、意外なほど作りこまれたSFを掛け合わせているのがこの作品。
アメリカ人の考えるSFは一流だ。
どうしても「2001年」を踏襲する概念は拭えないものの、そのSF考察は卓越している。
ドラマ「仁」にあった並行世界 もう二度と元には戻れないこと
一旦始まればまったく元の世界に戻ることはできず、少しばかり違った世界になるようだ。
そこにかけ合わせているのが歴代のブルース・ウェインだった。
現代のベン・アフレック
初代のマイケル・キートン
二代目のジョージ・クルーニー
この配役によって描くパラレルワールド 恐れ入った。
さて、、
バリーの心にずっと残り続けていた澱 母の死とその真相
フラッシュになった彼はそのスピードを生かし、とうとう時間を遡ってしまう。
このことで彼は母の死の原因だった「トマト缶」の買い忘れを予防する。
このトマト缶という些細な物体
しかしスパゲッティを作るために絶対必要なもの
スパゲッティは彼の大好物
トマト缶とはバリーの心の象徴だろうか。
たったそれだけのことが母の命を左右した事実。
そこに折り合いを付けられずにいる。
そしてバリーは自身の過去に介入してしまう。
そして…。
やってきたゾット将軍
その世界で行方不明のままのカル・エル
ロシアの隔離施設から助け出したのはカーラというカル・エルの従兄弟という設定。
でもスーパーガール
皆で力を合わせて立ち向かうも、バットマンもスーパーガールも死んでしまうというありさま。
さて、、、
このSFの凄さは、ひとつのパラレルワールドをその世界のバリーの死で終焉させてしまったことだろう。
ハチャメチャになった世界を取り繕うための堂々巡りは、その世界の彼の未来の彼が登場することで明らかになった。
若いバリーは、何も知らない新人バリーは、何故元の世界のバリーを庇ったのだろう?
若いバリーは元の世界で母が死んだことを知っていた。
彼らは同じなので、元々のバリーの記憶を共有したのだろうか?
彼が必死になって母を救おうとする気持ちもよく理解したのだろう。
この犠牲心こそスーパーヒーローたる所以で、この古くも絶対的な価値観はやはり胸を熱くさせる。
同時に元々のバリーには、出来事を変えるという行為の代償が身に染みてわかったのだろう。
母を救うことがたくさんの犠牲とその世界の自分自身までもを殺してしまった。
歴代のブルース・ウェインから散々言われたことを、ようやく理解できたのだ。
最後に彼はスーパーで母に声をかける。
些細な会話とハグ
そして、このみ今生の別れ。
どこか間抜けなのが目頭を熱くさせた。
折り合いをつける決心をするというのは、成長を伴っている証拠かもしれない。
バットマンは「心の痛みでバットマンになった」と言ったが、元に戻せないから今現在の危機的状況に対し全身全霊で対処しなければならないのがヒーローだろう。
そして、
最初に言った過去世界のバリーは、バリーが来たことによって亜種のようになって派生してしまったもので、その世界を元に戻すために再度トマト缶をかごから取っても、おそらく亜種の世界はあのままなのかもしれない。
その世界は、その時いなかったカル・エルが登場するかもしれないし、ゾット将軍に乗っ取られてしまうのかもしれないが、その世界に委ねられているのだろう。
だから、
バリーが戻ったと思った世界は、やっぱり母はおらず、しかしブルース・ウェインが変わっていたことでまた違う世界だというのがわかる。
バリーの選択によってパラレルワールドが変化するのを背景シーンが描いていた。
スーパーマンとスーパーガールが登場するのは、彼の選択如何なのだろう。
無数にあるパラレルワールドは、すべてが自分の選択によって変えることになるのだ。
このSF感
監督はこのような作品を湿っぽくしたりしたくなかったのだろう。
バリーの歯が取れるという演出で終わらせた。
まったく知らなかったヒーローだったので先入観なく楽しめた。
なかなか面白かった。