「 DC作品はダークなヒーローが多い中で、フラッシュは明るいキャラなので、随所でめちゃくちゃ笑わせてくれるし、最後は人間ドラマで感動します。」ザ・フラッシュ 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)
DC作品はダークなヒーローが多い中で、フラッシュは明るいキャラなので、随所でめちゃくちゃ笑わせてくれるし、最後は人間ドラマで感動します。
映画『ザ・フラッシュ』吹替え版ジャパンプレミア試写会レビュー
「世界を、この映画が変える」。ずいぶん大げさなキャッチコピーだが、そう宣伝したくなるのが分かる出来栄えです。少なくとも、アメコミ・DCコミックスのヒーローが登場する映画の世界観を一新する作品であることは間違いありません。30年ぶりにバットマン役に復帰したマイケル・キートンに併せて、自身もバットマンの声役として30年ぶりに出演した山寺宏一も大いに興奮し、プレミア試写会で本作を熱く熱く語りかけました。
それにしても、いまハリウッドは「マルチバース」が大流行。別次元とか並行世界とか「もしも」の上に「もしも」を重ね、何でもありのやりたい放題なんですねぇ。
主人公はスーパーマンらと共にヒーローチーム「ジャスティス・リーグ」で活躍するフラッシュことバリー・アレン。冒頭、舞台となるゴッサム・シティで事件が起き、バットマン(ベン・アフレック)が現れる場面でいきなり心をつかまれた。超高速で移動できるが“ガス欠”にもなど、少し天然な主人公の特徴を笑いを交えて描きつつ、心躍るサプライズが用意されていました。
フラッシュことバリー(エズラ・ミラー:二役、 細谷佳正)は、ヒーロー集団「ジャスティス・リーグ」の一員として人助けに励んでいました。しかし一方で母親殺しの犯人にされた父親が獄中にいることが、心の重荷となっていたのです。
ある日超光速で走っいると時間をさかのぼり、自身の能力で過去に遡れると知ります。さっそく幼い頃に体験した母親のノラ( マリベル・ベルドゥ)の死という悲劇を防ぐために時間を遡ってみるのです。しかし、過去を変えて戻ろうとすると、過去を変えたことで元の世界に戻れなくなり、別次元の世界へ。そこでは、まだ能力を得ていない18歳のバリーに出会ってしまうのです。そして、スーパーマンによって倒されたはずのゾッド将軍(マイケル・シャノン)が復活して、地球は破滅へ向かっていました。しかし、この世界にはジャスティス・リーグは存在していなく、スーパーヒーローは誰もいませんでした。
ふたりのバリーは唯一存在を確認できたブルース・ウェインを訪ねてみます。でも、そこにいたのはよぼよぼの年老いた老人でした。その老人は語ります。バットマンは引退したのだと。
2人のバリーは、やさぐれていた元バットマン(マイケル・キートン、山寺宏一)の尻をたたき、なんとかスーパーマンのいとこであるスーパーガールのカーラ(マイケル・シャノン、橋本愛)を見つけて、協力を頼むのでした。
別次元に迷い込んだため、性格も容姿も異なる2人のバリーが行動を共にするのですが、演じ分けたミラーと吹替え版の声優・細谷佳正の表現力に感嘆しました。
この別次元にはスーパーガールのほか、マイケル・キートン扮するブルース・ウェインも登場。つまり約30年ぶりにバットマンを演じるのです。バットマン役を同じ作品でマイケル・キートンとベン・アフレックが演じるのは、なかなかあり得ない設定です。しかも片方は引退していたなんて、ヒーロー映画では考えられないことです。
そんな驚きと感動が絶えず押し寄せる中で迎える結末。これまでのヒーロー映画では勧善懲悪。とにかく悪役をなぎ倒して勝利することが定番でした。けれども本作で一番悪いのは、安易に過去に出向き、勝手に歴史をかえてしまった主人公なのです。そこがこれまでのヒーロー映画と違う点です。だからこそ迎えるバリーの、何度も何度も試行錯誤を重ねた果てに、時間を元通りにしようとする最終決断には泣けました。
DC作品はダークなヒーローが多い中で、フラッシュは明るいキャラなので、随所でめちゃくちゃ笑わせてくれるし、最後は人間ドラマで感動します。これまでのヒーロー映画とは一味ちがう、全てが詰まっている素晴らしい作品だと思います。
このラストシーンを見届けたなら、本作が起点となるという「DCユニバース」の今後が楽しみで仕方がなくなることでしょう。
最後にあっと驚く映像があるので、エンドロールで席を立たず絶対に最後まで見てほしいです!
何でもありの設定だけに薄っぺらな世界になりかねないが、変人バリーのキャラクターの立たせ方がうまく、しっかり見せるのはさすがハリウッドです。