劇場公開日 2016年6月4日

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「王女は二階建てバスに乗って」ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出 ユキト@アマミヤさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5王女は二階建てバスに乗って

2016年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

知的

幸せ

王女様が宮殿を抜け出し、一般庶民の暮らしを一夜だけ楽しむという、いわば「逆転・シンデレラストーリー」。
本作のHPを見ると、イギリス王室で本当にあったお話のようです。
あの「ローマの休日」の元ネタでは? というのが本作の謳い文句。
監督の名前を調べて二度びっくり。
「キンキーブーツ」のジュリアン・ジャロルド監督です。
僕はあの作品、劇場で観ました。
倒産寸前の工場を任された二代目若社長が、SMっぽい、おネェ専門のブーツ製造で、会社を立て直すというストーリー。これ嘘のようなホントの話なんですね。
マイナーな作品でしたが、痛快メチャクチャ面白かった。見て損はないです。
「あの監督が、こんな大掛かりな映画をつくれるようになったのねぇ~」と感心してしまいました。
本作では、とにかくエキストラの人数が半端ないです。
それもそのはず、舞台は第二次大戦末期の1945年5月4日、大英帝国がヒトラー率いるドイツに勝利し、降伏文書に調印させた、まさにその夜を描くのですから。
もう戦争は終わりだ!!
空襲警報に怯える夜はこれで終わり。
我らがグレートブリテンはファシズムに勝ったんだ!
街中が、人々が、喜びに沸きかえっております。
その群集シーンをキャメラは存分に撮って行きます。
制作費かかってんなぁ~、というのが正直な感想です。
戦争という国家の非常事態。ロンドンは幾たびとなく、激しい空襲に襲われ、多くの犠牲が出ました。その恐怖と戦う、精神的な苦痛。
 ロイヤルファミリーの王女様たちにとっても、戦争という閉塞感の中、更には、宮殿からは外へ出られない、という二重の精神的苦痛があるわけですね。
「バッカばかしい、青春をこの宮殿の中で送れというの? まるで尼さんね!」
と、のたまうのは王室の次女マーガレット王女様です。
そこで姉のエリザベス王女が、父親である国王、ジョージ6世に掛け合います。
「陛下、戦勝記念、百年に一度あるかないかの、この佳き日に、国民たちと交流して喜びを分かち合いたいのです」
このとき彼女は19歳、さすが、王位継承者。しっかりしてますなぁ~。
国王陛下におかれましては
「娘たちにとっても、青春の一ページ、記念すべき日かもしれない」
と奇跡的にお許しが出ます。
二人の王女は大喜び……、なんですが……やっぱりねぇ、ロイヤルファミリーですし。
なんのことはない、がっちり護衛付きで宮殿の外へ。
しかし、この夜は、まさに戦勝祝いの特別の日。街じゅうが浮かれ騒いでます。
いつのまにか警護する方も、ガードがユルユルに。
その隙を狙って、マーガレット王女がパーティ会場から脱走。エリザベスも続きます。二人は初めての街の中、途中ではぐれてしまいます。
マーガレットを追いかけるため、バスに飛び乗る、エリザベス王女様。そこで出会ったのが、空軍兵士のジャック。
戦勝記念日だというのに、ちょっとブルーな雰囲気。
「君のようなお嬢様には、僕ら庶民なんて理解できるのかい?」と挑発的です。
「なんですって!! わたしだって准大尉としてお国のため、兵士たちの慰問活動をしてきたのよ」
でもさすがに、お嬢様。なにせバスに乗るのに「お金が必要」ということさえ知らなかったのです。バス代をジャックに支払ってもらったエリザベス。ふたりは、運命に導かれるように、夜の浮かれ騒ぐ街中、マーガレットを探す「冒険」に出かけることになるのです。
このお話、戦勝記念日に、エリザベスとマーガレットの王女二人が、お忍びで街に出かけた、というのは、どうやら事実らしいんですね。ただ、なにせ英国王室のメンツにも関わることなので、詳しいことはわかってないようです。
ただ、英国王室というのは、映画のネタになりやすいのかなぁ~、とおもいますね。
ヘレン・ミレンがエリザベス女王を演じた「クィーン」

それに吃音癖のある国王ジョージ6世を描いた「英国王のスピーチ」

どちらの作品もアカデミー賞に輝いております。

また、故ダイアナ妃殿下の数々の暴露ネタなど、話題に事欠かないのが英国王室なんですね。
逆に言えば、それだけ王室と庶民の関わりが深い、と好意的に見ることもできそうです。映画の後半、軍服姿で、車を運転するエリザベス王女の姿。
本作で一番美しくて、凛々しくて、胸キュンしてしまうシーンです。
エリザベスを演じるのは「世界で最も美しい顔ベスト100」にノミネートされた、サラ・ガドン。
やはり、美女がスクリーンに映える姿は、映画のお楽しみの一つですね。
演出としては、やや、とっちらかってる感じがあるものの、主役のサラ・ガドンのチャーミングさに救われています。それをスクリーンで見るだけでも価値はあるかもと、思ってしまうのでした。

ユキト@アマミヤ