「親子の業からは逃れられない」はじまりへの旅 sannemusaさんの映画レビュー(感想・評価)
親子の業からは逃れられない
資本主義がはびこる人間社会を嫌い山奥で暮らすヒッピー家族のお話。
ストーリーのテンポも良く、映像も美しく、子どもたちも可愛らしく、愉快で笑えてちょっぴり泣けて、バランスのよい作品で、そしてメッセージ性が強い。
監督は彼らの生き方を讃えるような映画を作りたかったんだろうか?とも思えるんだけど
それにしては描写が極端でコメディちっくで、皮肉めいてる感じも受ける。とはいえ、彼らと対比してもっと皮肉に表現されているのは資本主義社会で一般的な暮らしをする人々。
超マッチョな父だが、そのあり方を否定され、傷つき、自身を深く反省するシーンもある。
家族のあり方、社会との関わり方、異なるものの受容性、を考えさせられる作品でした。
一番強く考えたのは、子は親を選べない、ということ。
家庭で学んだことは子のスタンダードになってしまう。思想も生活スタイルも感情も愛情も。
子の自我の形成のためにも、そのスタンダードを自分自身で認め、自ら消化し自分のものにするためにも、他者の存在から遠ざけるべきではないと改めて感じた。
親自身の価値観を否定されたくない、自分を正当化したいというのは自衛本能的なものだと思うが、それを子どもに押し付けるのは親のエゴだ。
押し付けなくても子どもは理解し、自分で考え、受容していく。その過程には反抗期もあるだろう。
親は子を守るためといいつつ、自身を守るために愛情を歪めてしまってないだろうか、
親の心子知らず、子の心親知らず。本作後半のベンのように自問自答し自身と子とを省みながら育てていくのが、親のあるべき姿なのかなぁ。