「批評性に飛んだ作品」はじまりへの旅 kkmxさんの映画レビュー(感想・評価)
批評性に飛んだ作品
家族愛、常識についてなど切り口はたくさんありますが、この映画はエゴを扱った物語だと感じました。
父親は子供たちを支配するモンスターで、社会から孤立した環境で彼らを洗脳しているように見えます。
そのような中、ある事件をきっかけに父親が自らの過ちに気づき、森の生活を選んだ本来の理由を思い出すことで愛の意味を再確認でき、その結果家族の絆が再生していきます。
閉じられた世界の中の暴君であるCaptain Fantasticから地に足のついたCaptain Realistic に転回するところにドラマがあるなぁと感じました。
しかし、個人的には冷めてました。それまでの父親のやり方は度が過ぎていて手遅れに近いと思ったから。
8歳の子供が合衆国のナンチャラを暗唱し、自分の考え(という名の父の思想)を語るという背筋が凍るシーンがあるけど、小さい子ほど父親の価値観に疑いがなく、純粋培養なのが伝わります。父の改心で一家は社会の中に戻るが、生まれてからずっと森で育った若年グループの子供たちは、ゲームをはじめポップカルチャーが氾濫する現代の子ども社会にすんなりと馴染めるのだろうか?今までの社会を敵視した価値観を持ちながら適応はできないだろう。
エンド後の彼らの大変さ・苦しさは想像を絶するものになると思います。オヤジ罪深過ぎます。
(子どもだから可塑性が高く、今の家族関係が安全なのですぐに馴染む可能性もあるけど)
一方で、頻発するブラックなギャグは基本気まずくて面白かったです。チョムスキーおじさんの誕生日は気持ち悪すぎで最高でした。あれ、チョムスキー本人が見てもキモいと思うだろうな。
現代の価値観に疑問を抱かせつつ、一家の価値観もどうなのか…と投げかける本作品はとても批評性が高いと思います。従って、多様な受け取り方ができるような作品なのでは、と感じた次第です。
父親が問題ありすぎに感じられたため、個人的には作品に没入できませんでした。しかし、色々と思いを巡らせることができる深い内容だったため、結果的に観て良かったと言えます。スイートチャイルドのメロディの良さを再認識できたし。アコースティックバージョンは本家ガンズより好みかも。