「映画のほうが面白い」夏美のホタル バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
映画のほうが面白い
いやぁ、良かった。文句なしに良いと言える青春映画だった。まず画が良い。主人公が父の形見のバイクで走る姿、豊かな自然の情景、フィルムカメラで撮影されていく写真、有村架純の伸びやかな肢体、いずれもまさに映画的な画で、それぞれ見入ってしまう。そして虫の鳴き声などの自然音が良い。ナチュラルな台詞回しが良い。緩やかな時間の流れの中で、微妙な表情の変化で描かれる繊細な感情表現が良い。廣木監督は『さよなら歌舞伎町』などのようなエロス描写が濃厚な映画を撮る一方で、少女や若い女性を主人公とした青春映画も多く撮っていて他にも秀作が多い。
特に有村架純が良い。特別に好きな女優というわけではないんだが、この映画の彼女は素晴らしかった。それ以上に良かったのが雑貨屋店店主役の光石研。素晴らしい名演だった。仏像彫師役の小林薫もこれまた良くて、2人ともさすがはベテランの演技。とても良い映画でした。
後になって原作小説も読んでみたんだが、そっちはちょっと合わなかった。映画のほうが面白かった。本末転倒なようだが、そう思っちゃったんだから仕方がない。原作の主人公は男のほう(映画では工藤阿須加が演じている)で、ヒロインの夏美は幼稚園教諭なんだが、ちょっと疑問に思ったのは幼稚園の先生ってそんな長期の夏休みを取れるんだろうか?ということ。
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