「昭和世代が見た感想」何者 asicaさんの映画レビュー(感想・評価)
昭和世代が見た感想
佐藤健が主演なのだなと思って見ていたら、有村架純に菅田将暉、と随分豪華メンバーだなと。
そう思ってる矢先に山田孝之、そして二階堂ふみ、岡田将生。
1人で看板張れる役者をこんなにゴッソリ使っちゃってまあ贅沢な作品だわねーと思いつつ
ツイッターやインスタの使い方に哀れみを感じながら
そうそう 身近に就活生もいないし自分も経験ないしと、思って見ていた。
見終わってみて
さすがだなと思っている。
これくらいの内容で こういった話を
見応えある作品にするための布陣が生かされていた。
キャスト見ると当たり前だろう とも思うけど。
よくまあスケジュール合わせられたものだなあとラインプロデューサーにご苦労様と言いたい。
若者だった頃の私は団塊の世代のような揉まれ方の経験もなく、こう言った彼らのような時代特有といったような苦しみの経験がない。
だがどの世代でも 自分なりの苦しみや悩みを抱えてはいるし、それなりの解決策や解決しないジレンマはある。
何も こういうツイッターがあるから可哀想というわけではなくて、どの時代にも ハスから見るようなタイプの人間いるし、昔っから「俺は体制に迎合したくない」とか「就職なんかしても〜」みたいなのはいた。
舞台やバンドに明け暮れ、それで生きて行きたいと思う者。
夢は諦めなければいつか叶う?
まさか。
菅田将暉が演じるバンドマンは、きちんと引退して
遅ればせながらに就活を始め、あっさり希望の職をゲットする。
彼は、その率直な人間性が受け入れられているわけで
その同居人を裏アカで蔑む佐藤健は、自分が褒められた者ではない事を自覚していてそれがさらに自分を追い込む。
岡田将生に有村架純が言う言葉は、見ている大人はみんな言いたくてしょうがない内容。
母親というカセを背負った時に、人は地に足がつくのだろうか。
ずっと人より優位に立っていたからか、周りの人間に親切にする事が当然である生き方の二階堂ふみは
余裕で一流大手に入れるはずだと思っていたのに、
取り残されていく不安で泣き崩れ、佐藤健の生き方を罵倒する。
言われた側の佐藤健は、そこで自分を見つめ直す素直さをもっているし
言った側の彼女の持つ、泣き崩れる正直さが きっと彼女の持ち味になる。
2人とも結構 良い育ちの子なのだなあと思う。
彼女に関して言えば、
こういう風に何かに 突き落とされるくらいに苦労する事は人生において 非常に有意義だし
そういうところから立ち上がる彼女には 人に対する優しさ(心からの)が生まれる。
もし ストレートになんの障害もなく思ったような会社に入ったら、それはそれは鼻持ちならない女に出来上がる事だろう。
なんて言われてもその渦の中でもがいている時には言われたくない言葉だろうし、まったく響かないんだけど
そうなのよねーとおばさんは思うのである。
辛さ 思うように行かない壁
それらは それを乗り越える者にとっては これ以上ないくらいに成長をもらえる。
リアルに 社会に出ていく前の関門に立っている彼らへ
こういうみっともなさや つたなさ
もがいて 苦しんで
何かを掴めたり掴めなかったり
時に それを乗り越えられる気力がなくなっても
それが人間であり 人生であり
ない者が ある者を
持ってない者が 持つ者を
羨み ひがむのではなく
自分に与えられた物の中で 自分なりの生き方を
全うして欲しい。
そういう事を思う映画だった。
エンドロールで米津玄師の名を見つけ
こりゃまた ここまでしたか と感心した。
(中田ヤスタカの方が制作時にはネームバリューあったんだろうけどもね)