劇場公開日 2016年6月11日

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「【矛盾だらけの僕達】」教授のおかしな妄想殺人 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【矛盾だらけの僕達】

2020年11月17日
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ウッディ・アレンらしいシニカルさ。

皮肉たっぷりで、笑わせられる。

本来人々を苦悩から解放するはずの宗教が、人々を救済せず、独善で雁字搦めにしてる状況を鑑み発展した学問が、哲学だったはずだ。

ところが、哲学も、人々どころか、自分自身をも解放出来きず、それどころか、苦悩のどん底に突き落とすだけなのだ。

法治国家とは言うが、今も昔も、世の中には不正義が溢れている。

もし、単純に正義という価値観だけで、不正義に天誅を下せれば、正義の味方気分で、それは気持ちが良いかもしれないし、解放感が得られるかもしれない。

だが、そのモチベーションのきっかけが、ルーレットの当たりだったとしたら、悲しいではないか。

こんなものはシンクロニシティではない。
それに、そもそも哲学とシンクロニシティは対立するもののはずだ。

僕達の周りは矛盾だらけだ。

不正義もその一つかもしれないし、欺瞞や、自分自身を客観視出来ず、自己肯定を繰り返すことも実は矛盾の一つのように思う。

ジルが一人の人に決められないというのも、実は、単に自分勝手なだけだ。

正義が大事なんて言ったって、自分自身がモラルをないがしろにし、正義やルールを破っていたらしょうがない。

この映画、哲学も、独善の恋愛も、独善の正義もまとめて皮肉ってみせている。

皆、自分勝手で、実は世の中そのものがろくなもんじゃないのだ。

そして、エンディング。

僕は、これを観て天罰だと思ったであろう人達のことも、ウッディアレンは皮肉たっぷりに影で笑っていると思う。
「ほら、すぐ何かに原因を求めようとする」と、「これは、単なる偶然なのだ」と。

ウッディアレンは、僕達を救えるのは、宗教でも、哲学でも、そして正義感を振りかざすことでもなく、ごく当たり前のモラルやルールの下で熟慮できる僕達自身なのだと言いたいのではないか。

そんな風に思う。

じゃないとスパイラルは、いつまでも、いつまでも続くのだ…。
いや、もしかしたら、もう抜け出せないのかもしれない。

ワンコ