「なんとベロニカ・フランツ監督は鬼才ウルリッヒ・ザイドルの妻! ザイ...」グッドナイト・マミー ひがしのりさんの映画レビュー(感想・評価)
なんとベロニカ・フランツ監督は鬼才ウルリッヒ・ザイドルの妻! ザイ...
なんとベロニカ・フランツ監督は鬼才ウルリッヒ・ザイドルの妻!
ザイドル監督も製作に携わった本作はオーストリアの才能が凝縮したとても貴重なアートホラー映画です。美しい映像とカメラアングルを使って狂気を切り取り、じわりじわり恐怖をもたらす意地悪な手法にザイドル監督らしさを感じました。
原題の「ICH SEH, ICH SEH」は「僕は見てるよ、僕は見てるよ(I see ,I see)」という意味。
これは欧米の子供向け遊び「I SPYゲーム(ドイツ版)」における定番フレーズとのこと。
「ICH SEH, ICH SEH」は双子の少年を表しているのと同時に「僕は見えるけど、(ママには見えないの?)」というメッセージを含んだ、とても考え抜かれたタイトルだったんですね。
目の前にいるのに顔が包帯で隠れていたり、見つからないようにベッドの下や影に隠れたり、見えてるはずなのに見えないフリをしたり。見えないのに見えるフリをしたり。登場人物の視点による“見える、見えない”と、我々観客の視点による“見える、見えない”が何度も重なることによって恐怖が倍増します。
幻想的ともいえるラストシーン。最後の最後に第四の壁を破って、観客を笑いかける演出がとても不気味で怖かったです。そういえば、謎の美青年2人組の無邪気な狂気を描き、唐突に第四の壁を破壊した「ファニーゲーム」のミヒャエル・ハネケも同じオーストリアの監督ですね。
このラストに対しては2つの解釈があります。
1:エリアス少年は母親と共に焼死。エリアスが望む理想の家族が天国で実現した。
2:エリアス少年は火事から生還。ルーカスと同様に死んだ母親も見えるようになった。エリアスが望む理想の家族が実現(それは彼にしか見えない)。
親子3人の姿に火の粉が重なってフェードアウトする点から、おそらく上記1だと思うのですが、エリアス少年の立場からすると自分が死のうが生きてようが、望む姿で3人が一緒になれたので究極のハッピーエンドといえるかもしれません。
鑑賞後の考察が楽しい作品でした!